2 校内散策と、白い手

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「……さん。結木さん。」 「‼︎」  考えごとをしていたら、声をかけられていたことに気づかなかった。  前の席の花本さんが、プリントをまわしてくれていたみたい。 「ごめん……ありがとう。」  お礼を言うと花本さんはちょっとだけおどろいたような顔をした。 「結木さん、なんか今日、ふんいきちがうね。」 「え……。」 「考えごと? ちょっとヘンな顔してたよ。」  思いがけず話しかけてもらって、言葉につまる。  ふんいきがちがうなんて言われたら、なんて返せばいいんだろう?  ふだん、おしゃべりすることに慣れてないから、プチパニックになっちゃう。 「そ、そんなことないよ……。」  ようやく小さな声でそう言ったら、花本さんは苦笑いして前を向いちゃった。  ……今の、たぶん失敗だよね。  あーあ。どうして笑顔でハキハキ話すことができないんだろう。  これじゃ、幽霊よりわたし自身が怖がられちゃうよ……。  この性格、直したいなぁ。  真ん中のほうの席でおしゃべりしながら笑っている八神くんが、ちょっとだけうらやましく思えた。 昼休み。 すごい勢いで給食を食べ終えたらしい八神くんは、わたしがちょっとだけ苦手な牛乳まで飲んでくれた。 いつも食べるのがおそいから、正直ありがたい。 ありがたいんだけど、みんなの視線が痛い……! いつもの倍ぐらいのスピードで給食をすませたわたしは、チクチクとした視線を感じたまま八神くんの背中をおいかけた。 「さて、どうしよっか。いっしょに校内一周でもしてみる?」 「えっ⁉ それはちょっと……。」 ろう下を歩きながらそんな提案をされたから、なんとか説得して人気のない校舎の四階へ。 八神くんって、自分が人気者なのわかってないみたい……。 「霊のしわざだとしたら、人がたくさんいるところにはでないんじゃないかな。」 「たしかに。今までも、ヘンなことが起きるのは俺一人のときだったかも。」 「ヘンなこと……。引っぱられたり、何もないのにつまずいたりしたんだっけ。」 うん、とうなずく八神くんの後ろ姿をながめながら考える。 他に人がいなかったなら、「だれかのしわざ」っていうのは考えにくいよね。 やっぱり、霊? でも、なんで八神くんばかり何度もいたずらされてるんだろう。 昨日のネコは、たまたまその場所に住みついていて。 わたしたちがあそこで立ち止まっていたから、じゃれてきたんだと思うんだけど。 「どこか通るたびにつまずいたりする、ってわけじゃないんだよね?」 「うーん。とくに、場所は関係ないかなぁ。」 「そっか。だとしたら……。」 八神くん自身に、霊がついている? たとえば、家族の霊が見守ってくれてるとか……。
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