題名「見えない星をつかまえるはなし」

1/1
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ

題名「見えない星をつかまえるはなし」

 僕「はむっ......」  肉まんのはじをかじり皮を食べる。  露出した中身に酢醤油をたらす。  僕「もぐ...もぐはふ」  どこかで聞いたことがある。 「そんな食べ方してるのは君だけだ」  そんなこといわれてもなぁ。  この食べ方はたれが染み込んでおいしいのに...。  そういえばもう秋だ。  枯れ木も紅く、夕焼けも紅い短くも綺麗な季節なのだ。  ヒュー...。  僕「さむっ!」  そう。この寒さもひとつの味変。  僕「この寒さがいいアクセントになって...あいたっ!」  周りを見回す。  どこからやってきたのか紙飛行機が。  僕「???」  紙飛行機にはLOOKの文字が。  中を見てってこと?  がさっ 「この手紙は不幸の手紙です。  これを読んでる頃には  すっかりこの手紙に書いてる  予言の通りに運命が動くでしょう」  なんだ。不幸の手紙か。  最近はチェーンメールというのが流行ってるらしい。  僕「どこから降ってきたんだ...?」 「この手紙はお守りです。  あなたを守って導く  不幸のお守りです。」  そんな言葉が最後に付け加えられた。  僕「まあ、ポイ捨てはよくないよね...?」  自分に言い訳しつつ肩に下げたポーチにねじ込んだ。  次の日に異変に気づいた。  僕「うわ...これ...」  ノートいっぱいに落書きが書いてある。  何が書いてあるかは読めないこともないが  僕「こんなの持ってるわけにはいかないよな...」  不幸中の幸いか、今日は燃えるごみだ。  僕「・・・」  ノートとにらめっこする。  ほかのページはどうなってるんだろう?  しかし、それを見る勇気は僕にはなかった。  キーンコンカーンコン 「僕くん。どうしたの?暗い顔は似合わないよ?」  僕「秋・・・」  秋「なんか嫌な事あった?気分が落ち込むような...」  僕「いや・・・これといってそういうことは・・・」  反射的に嘘をついてしまった。  しかし、秋に余計な心配をかけては・・・  秋「僕くん?嘘つくとき口を隠す癖抜けてないね」  僕は無意識に口の前に片手を持ってきて隠す素振りをしていたようだ  僕「・・・」  秋「昨日肉まん食べたでしょ?」  僕「!!!」  何故そんなことがわかるんだろう?  あてずっぽ?それとも不幸の手紙のせい?  秋「これ。レシート、フードの中に入ってたよ」  僕「なんだ。いつものやつか...」  近所の顔見知りのコンビニに行くとたまにいたずらでこういうことをされる。  おそらく店員が茶目っ気を出してきたんだろう。  秋「あーあ。あの店員だろうなぁ」  僕「知り合い?」  秋「まーねー」  話を聞くにかなり可愛いらしい。  秋「まぁ夜中しかシフト入ってないみたいだし?僕くん惚れちゃだめだよ?」  そんなことはわかってる。  僕「そういえばこれさ。」  カバンから不幸の手紙を出した。  秋「あー。古いよね不幸の手紙はさすがに。これを捨てるか迷ってるの?」  迷ってるかと聞かれたら迷ってはいる。 「不幸のお守りです」  この一文が僕を迷わせる。  秋「わたしならとっとくかな。ほら、知ってる?神社のお守りってさ実は呪いの一種だって話。毒を持って毒を制すって奴」  つまり、お守りとしては一級品ってことか。  秋「じゃ、次の授業で決めるってのはどう?今日17日でしょ?僕くんが当てられなかったら本物。当てられたら不幸の手紙。どう?」  僕「むぅ。そんな条件出されたら断れないじゃないか」  秋「ふふっ。じゃあお昼ご飯賭けてあげようか?僕くん最近ダイエットしてるしほしいでしょ?」  秋の・・・手料理!?  秋は自分で弁当を作るほどお弁当に熱を入れてるのだ。 (ごくりっ)  思わず喉を鳴らしてしまう。それほどまでに力をいれているのだ。  キーンコンカーンコン 「......次の文を17番僕。読みなさい」 (秒殺?) 「ああ。僕は体育委員だったな。しかたない。次の文を7番読みなさい」 (なんか知らないけどやった!)  数学地理歴史ついに制覇してしまった。  僕「ふふーん。やった。秋のお弁当ゲット!」  秋「まぁ、そうなるか。ちなみにお弁当の代わりに菓子パン奢ってもらうよ?」  そのくらいどうってことない。  なんてったって秋の手作り・・・手作り?  それは捉えようによっては秋が僕のために作ってきたとも・・・  秋「どうしたの?ミートボールとかおいしいよ」  秋は僕の気も知らずに菓子パンをちぎってほおばった。  春秋、夏の心知らずという奴か・・・  そんな考えは明後日のほうへ飛んでいった。  僕「う、うまい!!こんな料理食べたことない!」  秋「そりゃそうだよ。お弁当っていうのはそういうもん」  秋にお弁当を教えられるとは・・・  キーンコンカーンコン  あはは  またね  さよなら  いろんな挨拶が飛び交う。  まるでここだけ多国籍みたいだ。  そういえば今朝ノート捨てたっけ?  もったいなかったな。  どたっ。  頭になにか降ってきた。  僕「これって今朝捨てた・・・」 『地理1-A 僕』  確かに捨てた。  いやそもそもおかしいのは匂いだ。  生ごみと一緒に捨てたのだから臭いはずだ。  しかし天から降って来たそれはむしろ新品に近かった。 『LOOK DOOR』  ふと顔を上げる。  そこには・・・秋がたっていた。  僕「な、なにしてるの?」  秋「・・・」  秋「うしろ」  うしろ?うしろにはドアが・・・  僕「・・・」  確かにドアだった。ドア¨だった¨。  そこには見る影もないくらい赤い・・・  血で染まったドアだったものがあった。  じりっ......後ずさる。  後ろに逃げれば・・・  秋「どこに行くの?」  僕「こ、こんなところにいたらどうなるかわかるでしょ??」  秋「あははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!」  秋が壊れたように笑い出す。  いつの間にか電気が消えている。  前も地獄うしろも地獄。  秋「はあ。ねえ知ってる?」  何のことだろう。知ってるわけない。  秋「あのね。実は今日の美術の時間」  美術。何か関係あるのか??  秋「絵の具の缶をぶちまけちゃったんだよね。わたし」  つまり?  僕「あっ。絵の具だこれ」  秋「そそ。僕くん体育の準備でいなかったでしょ」  はあ。つまりノートまで用意してってこと?  秋「秋は怖い話の季節でしょ?」  僕「だからってやりすぎだよ・・・」  秋「ごめん。じゃあお詫びに怖くない都市伝説を教えます」  ある寒空の広がる宇宙の話。  その宇宙では心を持ってる人がいませんでした。  ですがある日のこと。  神様が言いました。  心は手の届く場所にある。  誰一人として見たことない心。  たった一人心に出会った者がいました。  その心をみんなで分け合いました。  みんなが幸せで不幸のない宇宙ができました。  そして幾千年。  その宇宙に星が生まれ人が生きました。  それこそが今の地球なのです。  秋「どうよ!渾身の出来!」  僕「ちょっと無理やりすぎるけどね」  秋「あはは。わかる人には分かる話ってね」  秋「でも、もし本当に心があったら?」  秋「わたしも欲しいな」  僕「な、なにを?」  僕くんの心臓を、だよ。  僕「はあー。今日は散々だったな...寝よう」  zzz......zzz......zzz...... 『ねえ。わたしの心って何色かな?』 『わからないよ。』 『じゃあ君の色をわたしの色と混ぜ合わせたらわかるかな?』 『わからないよ。』 『試してみる?』 『わからないよ。』  なぜ頑なにわからないを通すのだろう。  ふわっ。  あたまが宙に浮く感覚。  あっこれ夢......  ドシン!!  僕はあたまから地面にダイブしていた。  秋「僕くん?どうしたの?そのあたま?」  僕のあたまには痛々しくシップが貼ってあった。  変な夢を見たせいだ。  心に色なんてあるわけないのに。  秋ももうすぐ終わりを迎える。  秋と冬の境は人によって違う。  僕の終わりはもうすぐ。  冬になったらお菓子でも買い込んで秋とコタツに入るかな。  秋「今日はさ。なんかいつもより寒いよね。あの噂ってホントかな?」  僕「あの噂?」  秋「なんか地球の表面温度が下がってきてて氷河期に入るとかなんとか」  僕「聞いたことない」  キーンコンカーンコン  秋「ほら!遅れちゃうよ!」  僕「わわっ!ちょっと待ってよ!」  僕が不幸の手紙なんて忘れた頃。  不幸の手紙はじくじくと迫っていたんだ。  リーンリーンリーン。  昼間だというのに鈴虫が鳴いている。  鈴虫なんて普段気にも留めないのに。  昼間にないてるだけで少し怖くもあった。  ビュー!かたかた!かたかた!  なぜだろう?こんなに寂しいのは。  噂だがこんなときにカップルが増えてるらしい。  やはりさびしいんだろう。  僕には秋がいる。  秋には僕がいる。  秋は怖い話が好きだというのはこの前の事件で知った。  秋の趣味なんてわからない。  だけど秋には僕がいる。  それだけで十分じゃないだろうか。  しかし寒い。  校舎の裏に行けばましかも知れない。  校舎裏?どういけばいいんだっけ?  右往左往しつつ寒さに耐えて裏までいく。 「好きです!付き合ってもらえませんか?」 「どうしようかなー。とりあえずお試しってのはどう?」  ここでもカップルか誰だか気になりはする。  ちらっと。ちらっとね。  秋「いやー。わたしに告白なんてね」  目の前が黒く染まった。  直後、赤くなって。  手にはいつの間にか彫刻刀が握られていた。  うしろから。ぶすり。  血は出ない。  だって人形だから。  こんな出来損ないは壊してしまおう。  彫刻刀を肌に沿って食い込ませる。  そうだ。僕はほしいんだった。  秋の心が。  だから外側なんてどうでもいいよ。  僕は手に入れたんだ。  空にあるはずの見えない星を。  終
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!