オソ18の知能

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オソ18の知能

ヒグマの知能は高く、平和ボケした我々の意表を突いた行動に出る。 前ページで東里胡さんがペコメで加筆して下さった通り、野生生物の侵入を防ぐため電流を流している牧場の柵を、オソ18は見事にくぐり抜けている。 つまり、自分の身体が電気柵に接触しないように柵の下に穴を掘り、そこをくぐり抜けて牧場内に侵入している。 そこまでやられると、ある地点で監視カメラに姿を写した彼の行動は、実は次なる計画をスムーズに実現するための、彼によって仕組まれたワナ?!ではないかとさえ、俺は思う。 ヒグマが人間の心を惑わすワナである。 いかにも、この辺にいますよ的なアピールをしておいて、だ。 彼が、まったく人間の意表を突く行動に出る可能性を警戒すべきである。 オソ18をと思ってはならない。 ヒグマはアイヌにとって神だったように、その大きな体に巡る血潮のDNAは、この地のすべてを知り尽くしている。 文明という名の便利グッズに頼りきり、生き物としての野性も感性も崩れて麻痺した人間の幼稚な想像力など、磨き抜かれた彼の頭脳の前では手に取るようにバレている可能性がある。 彼をなどと侮るべきではない。 この地に君臨して来た神様だと思い、敬虔な気持ちで聖なる戦いに挑む覚悟が必要だ。 地域の関係者の方々の奮闘を心から応援するためにも、我々部外者、日本人ひとりひとりが大自然そのものに対する敬虔を、今一度、深く考え、自分自身の問題として捉えたい。 オソ18に現在食い荒されているのは牛であるが、本当に食い荒されているのは現代日本社会の在り方そのものではないか。 オソ18は警告しているのだ。 日本人はどこに向かおうとしているのか?! 電気柵で囲ったら手放しで安心できるとでも思っているのか?! 文明を過信して、己れの心身の平和を自らの知恵と力で護り抜く努力を怠ってきた心の抜け穴を潜られたような気がするのは僕だけだろうか。
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