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あーあ。危なっかしい。手伝わなくちゃ。
「ほらほら。慌てないで。手伝ってあげるから」
私が勤めるコンビニに片目義眼の男の子が来た。義眼のせいでいじめられてきたそうで、いつもビクビクしている。
「佐藤さん……ありがとうございます。何やるにも怖くて……。駄目なやつですよね……。義眼なんかじゃなきゃ良かった……」
一緒に品出ししながら言い訳をする山田くんにちょっとだけ苛つく。
「言い訳しないの。義眼だから何? 諦めたらおしまい。希望持って物事に立ち向かったら続く。それだけでしょ?」
山田くんは、ハッとした顔で私の顔をまじまじと見る。
「そうですよね……。ありがとうございます」
頑張ってくれるのかな? と思ったら山田くんは三日後にコンビニバイトを辞めてしまった。呆れてしまう。
「理由は何だったですか?」
つい店長に詰め寄ってしまう。辞めてしまったものは仕方ないが納得できる理由が欲しかった。
「いやね、佐藤さんの言葉で何か前向きになれたとか言ってたよ。佐藤さん宛てにお手紙を頂いたよ。読むかい?」
店長は机の引き出しから茶封筒を取り出したが、変な膨らみ方をしている。
「気になるんだよね。この膨らみ方……。私も見ていいかい?」
「構わないです」
店長が茶封筒に鋏を入れて手紙を取り出して、二人でその文面を読む。
『佐藤さん、突然に辞めてしまってすみません。佐藤さんの言葉が胸に響いたので、僕はやりたいことをやるために辞めさせて頂きました。僕は佐藤さんを想いながら、これからを生きます。佐藤さんのことをずっと見てます。その証明をプレゼントします。ありがとうございました』
違和感を感じる分、プレゼントとは?
店長が茶封筒に入っていたものを取り出して、悲鳴を上げて手からこぼした。
「ひっ……」
机の上に転がり止まった義眼がこちらを見てる。手紙の一文が私の頭の中をぐるぐる回る。
『ずっと見てます』
了
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