① 熟れた果実の食べごろは。

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 Subの父親とDomの母親の間に生まれた香坂は、小学生の時に受けた検査で自分がSubだと分かった。  容姿はDomでモデルをやっていた母親のものを受け継いだ。薄茶色の髪に、薄茶色の瞳、甘く整った顔は幼い頃から美しいと評判で、堂々とした風格から、あだ名は王子と呼ばれていた。  学生時代からモテていたし、それは教師になっても変わらない。  むしろ狭い世界なので、思春期でお年頃の生徒からはまるでアイドルのように人気があり、保護者から派手すぎるや、目の毒になるといった厳しい声をもらうことも度々あった。  もちろん、生徒との恋愛なんてご法度なので、あくまでも教師と生徒の関係を保っている。  ただ人気があるというのは、それなりに利用すれば授業を進めやすいというのが分かってからは、ほどほどに利用しながら上手く教師生活を続けてきた。  しかし完全無欠のイケメンなどと称される香坂にも悩みはあった。  誰もいなくなった廊下で窓に映る自分の顔を見て、香坂はため息をついた。  先ほどの生徒が誤解していたように、香坂はその堂々とした容姿からDomだと思われることが多かった。  Domという、いわゆる支配したい欲を持つ者達は、様々な分野で優れた才能を発揮することが多いが、その特徴として華やかで印象的な容姿を持つ者が多い。  いかにも、男らしくて堂々とした自信溢れる見た目をしているというイメージが付いていて、それはNormalの人達から見てもそうらしい。  しかし香坂は、支配されたい欲を持つSubなので、Domだと期待して来られても、その期待に応えることができない。  今までの人生、そのことの繰り返しで、まともな恋愛ができずに、間もなく三十路を迎えようとしていた。 (贅沢な悩みかもしれないけど、切実なんだよなぁ。それに俺っていかにもDomってタイプとは気が合わないし……)  Subの香坂には、支配されたいという本能的な欲があった。  本来ならばDomとパートナーの関係を築いて、欲求を満たさないといけない。  しかし、ダイナミクスを抜きにしても、まともに人付き合いができないのに、プレイをしてくれるパートナーを見つけるなどというのは、香坂にとってかなりハードルが高かった。
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