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① 熟れた果実の食べごろは。
この世には男女の性の他に、第二の性、ダイナミクスと呼ばれるものが存在する。
ダイナミクスは、相手を支配したいDom(ドム)と、支配されたいSub(サブ)があり、それ以外の多くは二次性を持たないNormal(ノーマル)に分かれる。
支配したいされたいというのは、本能的な欲求に基づいていて、DomとSubはパートナーとして関係を結び、プレイと呼ばれる行為でその本能的欲求を満たして生活をしている。
パートナーは男女間だけではなく、相性が合えば男同士でも一般的なものになっている。
世の中の多くはNormalであるので、かつては偏見の目で見られたり、揶揄われたりすることも多かった。だが、ダイナミクス法というものが成立して、差別的な扱いをすることが禁止されたこともあり、社会的にも広く受け入れられる流れに変わってきている。
今は学校の授業でもダイナミクスについて触れていて、希望すれば無料で検査を受けることができるので、国民の多くは、子供の頃に検査を受けて性を知る。
検査は人生をより良く生きるための過程と考えられいる。
自分の性について、思春期は誰もが悩み成長と共に受け入れていく。
人生において、心も体も満たされる相手に出会うこと、それはダイナミクスに関係なく、多くの者がそう望むことだった。
青春真っ只中、汗をかきながら楽しそうに運動場を走る生徒を見ながら、香坂仁は目を細めた。
わずかに開いた窓から、爽やかな風と賑やかな声が入ってきて、自らの学生時代を思い出して鼻から小さく息をはいた。
「香坂先生ーー!」
視線に気がついたのか、女子生徒が手を振ってきたので、香坂は口元に軽く笑みを浮かべて手を振り返した。
きゃーっと黄色い声が上がり、女子生徒達が集まってきたが、こら集中しろという指導教員の声ですぐにまた穏やかな空気に戻った。
「香坂先生、今日もイケメンー」
「あの涼しげな目元に色気、絶対Domだよね」
前から歩いてきた生徒がすれ違った後、自分のことを話している声が聞こえてしまい、さすがに恥ずかしくなって顔を伏せた。
比較的富裕層が集まる地区にあり、裕福な家庭の子供が多く通っている私立高校紅花学園。
香坂はこの学園に大卒で国語の教師として採用されて現在6年目になる。
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