第2章 匿名戦士

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 あのとき『写神館』が青空の写真でいっぱいになったのはそういうことだったのか。自分も企画だと知らずに投稿したひとりだ。大勢で集まって何かするというのが苦手で、みんなが楽しんでいる所に自分なんかが投稿してしまって申し訳ないと今になって思わされる。  けれどもし、どうにかして想いを届けたいというファンの投稿が真咲君の気持ちをほんの少しでも穏やかにすることができていたなら、ファンとしてそんな幸せなことはない。  だからこそ、自分の容姿を馬鹿にされていることなどもはやどうでもよくて、真咲君への純粋な想いに迷惑だ勘違いだと目くじらを立てて、感動ポルノだなどと侮辱すらする人たちが、ファンとして、どうしても納得できないと思った。  そしてそこまで読んで、ノエルは怒りと同時に可笑(おか)しさを覚えていた。  掲示板ではノエルの書いているものは「夢小説」と言われているようだ。けれどノエルは、いわゆる夢小説と呼ばれるジャンルのものは一度も書いたことがない。むしろどちらかといえば苦手な部類で、今後も書く予定はない。掲示板の人たちは意味さえ知らない言葉を得意気に使って他人を侮辱しているつもりになっている。そのことが、たまらなく滑稽で可笑しかった。  一方で、他にも違和感のようなものを覚えているのだけれど、それが何なのかわからずにいた。もう少しで、あと少しでわかりそうなのに。そう思いながら、書き込みを読み進める。
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