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今日、しばは、帰ってこなかった。
……なんだよ。朝、急にあんな話するから。
もしかしたら、今日、「かぞく」のお迎えが来るって、しばはわかっていたのかもしれない。表に出たことがないから、仕事中どんな感じなのか分からないけど、その、「かぞく」になってくれそうな人間たちの話とか聞こえるのかな。
ま、せいせいするよ。
口うるさく絡んでくるやつがいなくなって。
いつも通り。
ゆっくり、過ごして。
たまにおもちゃで遊んで。
気ままに、退屈に過ごす。
ちっとも寂しくなんてないよ。
「ねえ、ダックスちゃん?」
ふと、上の階のちわわが話しかけてきた。
「退屈じゃない?ちょっとお話しようよ。」
「…気分じゃない。」
ケージの隅で丸くなって、めんどうな気持ちを隠さないで返事をした。
放っといてほしかった。
「そんなこと言わないでさ、ね?」
「……。」
無視した。
もう眠ってしまうんだ。今日は。
「ふふっ。しばくんの言う通り、意地っ張りだねダックスちゃん。」
「えっ。」
思わず身を起こして声を上げた。
ちわわに尋ねる。
「どういうこと?しばの言う通りって?」
「しばくんにね、昨日の夜、ダックスちゃんが寝てる間に頼まれたんだ。」
『ダックスってばさ、寂しがりのくせに意地っ張りで。…でも、凄く良いやつだから、ボクが居なくなったら、たくさん話しかけてやってよ。ダックスと話すの、すごく楽しいんだよ。』
「いい友達ね。ダックスちゃん。」
…最後まで、うっとうしいやつ。
なにさ。
やっぱり分かってたんじゃないか。
今日でお別れだって。
腹立つ。
悔しい。悔しいけど、寂しいな。
「ねぇ、ちわわ。」
「なに?ダックスちゃん。」
「…しばの、かぞく、いい人たちだといいね。」
「ふふふ。きっと大丈夫、ダックスちゃん。」
くぅーんと小さく泣いてしまう。
「幸せになりなよ。しば。」
わたしの、友達。
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