悪辣令嬢、好奇心に散る 2

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悪辣令嬢、好奇心に散る 2

 王太子妃の座を手に入れた。望み通りドラゴンの末裔の王太子の妻となった。女の身で手に入れることができる権力の頂点。自分にこそ相応しい頂の座。だから欲しかった。王家秘宝の媚薬を盛ってでも。  心から望んだ結果だったが、王太子を犯して揺るぎない既成事実を作る。アシェラが当初計画していた過程は辿らなかった。だからだろうか。現状がアシェラの想定と、違ってしまっているのは。 「あぁ……ん……ああっ……グラードォ……」  自分から出ているとは思えないほど、甘ったるく蕩けた声をどうにもできない。ぐちぐちと無遠慮に指でかき回される蜜壺は、声よりも取り繕いようもなく、窮状を訴えながら媚びて懇願している。   「ああ、俺のかわいいアシェラ。悪い子だ。妃教育を放り出した上に、王宮を抜け出そうなどと。外に出るなと言っただろう? お前は美しすぎる。悪い虫があっという間にたかりに来るんだぞ?」  アシェラを掻き回しながら、グラードが低い美声を囁きかける。ぞくぞく背筋を震わせながら、アシェラは頑張った。   「ふぁ……だ、って……つまら、ないんだもの……」  権力が欲しかったのであって、知識が欲しかったわけじゃない。何をしても鬱陶しい小言を聞かずにすむ、権力の頂点だからこそ妃を目指した。妃教育を受けたかったわけじゃない。それなのに何かすれば、あっという間にグラードがすっ飛んでくる。 「美しい俺のアシェラ。お前は本当に悪い子だ……」    頑張るアシェラに金色の瞳が、愉悦を帯びて細まった。瞳孔が縦に伸びる龍の瞳。アシェラを見下ろすギラつく眼光に、アシェラの肌がぶわりと粟立った。  龍の()()()()によって、作り替えられてしまった身体。龍専用の女。目の前のグラードのためだけに作り変わった身体が、龍の気配に歓喜する。  子宮が火をつけられたように熱くなり、その熱は全身に広がっていく。グネグネと蜜で潤んだそこがうねりながら、龍を、グラードを求め出した。 「あ、あぁ……お願い……グラードォ……お願い……」  ボロボロと涙をこぼしながら、必死に懇願するアシェラに、グラードは薄ら笑いを浮かべた。足首を掴まれそのまま、大きく開かされる。あられもなくうねって媚びるソコが、グラードの黄金に光る眼前に晒された。 「ああ、アシェラ。なんて有様だ。もうここをこんなにしているのか……靴を舐めていた男どもは、お前がこれほど淫らだと思いもしないだろうな」 「ああっ!!」  グラードのソレが、ぐずぐずに蕩けたアシェラの蜜口に押し当てられる。禍々しく反りたち、悍ましい魔物のように脈打つモノ。  アシェラの腕などゆうに超えた太さと、巌のように硬い表面が、浮き出た血管でボコボコと隆起している。王家の血筋が受け継ぐアルティメットドラゴン。  到底人の身で受け入れられないソレを、龍の女(アシェラ)の身体は全身で欲しいと懇願している。龍に屈服した身体が、一層グネグネとうねって媚びた。 「欲しいか? アシェラ」 「欲しい! 欲しいのぉ!」  気が狂うほどの欲求にアシェラが叫び、グラードのソレが最奥まで一気に貫いた。 「ああああーーーー!!」  高く上がった悲鳴が咽せ返るような官能の空気に溶け、アシェラはぐすぐすと泣き出した。 「なんでぇ……なんでぇ……動いてぇ……グラード……」  待ち焦がれた楔は、最奥でぴたりと止まった。必死に腰を揺らしながら抗議しても、欲しい刺激には到底届かない。  満たされないもどかしさに焦れて、力の入らない腕を持ち上げ、アシェラはペチペチとグラードを叩いた。 「ああ、かわいいなぁ、俺のアシェラ。ちゃんといい子に妃教育を受けると約束できるか? いい子にできるなら好きなだけくれてやる」 「する! するから! 早く! 早く!! あぁっ! あああーーーーー!!」  ボコボコと血管が隆起したドラゴンが、蜜を滴らせた隘路を擦りたてながら引き抜かれる。腰が浮くような快楽にアシェラの嬌声が迸った。  寝台が波打つほどの激しい律動が開始され、アシェラが壊れたように喘ぎを響かせる。 「ああっ! いい! いい! あぁ!! もっと! もっとぉ……!」 「アシェラ、アシェラ! 俺の美しいアシェラ! お前は俺の女だ!」  圧倒的な快楽に完全に理性が溶け崩れ、一瞬で山よりも高いプライドも手放した。屈服する快楽に酔いながら従順に腰を振り、犯される快楽に浸り切った甘い声で哭く。  衝動のままに腰を打ち付けながら、グラードが快楽に狂ったように咆哮をあげた。アシェラの胎内で、魔物は煮えたぎるように熱を増し、不吉な程に膨れ上がっていく。 「ああっ! もうダメ! もうダメ! いっちゃう! いっちゃう! グラード! グラード!」 「アシェラ! アシェラ! アシェラ!!」 「ああーーーー…………」  体積を増した胎内の魔物が、最奥で大量の灼熱の白濁を吐き出し、アシェラの胎を満たした。その熱さに細い悲鳴を上げながら、アシェラが絶頂する。 「アシェラ……俺のかわいいアシェラ……」  深い絶頂の余韻に震える身体が、きつく抱き寄せられる。酩酊したようにグラードが唇を落とし、舌を這わせ歯を突き立てる。繋がったままのソコで、グリッとドラゴンが膣壁を抉った。 「あ……あ……むりぃ……いらないの……もうむりぃ……」  再びアルティメットしようとするドラゴンに、快楽の余韻に浸されたまま必死で身を捩った。魔物でしかないソレとの交歓は、深すぎる快楽と十分すぎるほどの充足感を与えてくる。一度で満足。 「かわいい俺のアシェラ。約束できたいい子にはご褒美をやろうな……」 「やだぁ……! いらないぃ……もういらないのぉ……!」    甘い美声を吹き込まれ、絶頂の余韻を残したままの身体を引き寄せられて、アシェラはボロボロと泣き出した。  どんどんと硬度を増す、ドラゴンに絶望するアシェラは結局離してはもらえなかった。 「俺の愛しいアシェラ。いい子にしてるんだぞ」  気が済むまで貪ったグラードが、軽快に身支度を済ませると、ぐったりと沈没するアシェラに口付けを落とした。そのまま弾む足取りで、放り出してきた執務に戻っていくグラード。 (こんなの絶対普通じゃない……)  何度も絶頂の淵に追いやられて、途切れ始めている意識の底。もうドレスや宝石を、買い漁るためのに起き上がる気力も、残ってはいなかった。 ※※※※※  夜会の王族席にてアシェラは、扇で顔を隠しながら会場内の隅々まで、熱心に視線を巡らせていた。確かめたいことがあった。 「……近頃アシェラ様はすっかり静かね。さすがグラード様だわ……」 「でも婚約を解消するって話が出ていたはずなのに……確かにお美しいけど、妃の器では……」 「グラード様が、王太子妃の仕事もされているんですって……やはりアシェラ様では……」 「……鬱陶しいわ」  ヒソヒソと交わされる噂話に、アシェラはポツリとこぼした。会場を見回すのをやめて、いつものように叩き潰しに行こうかと、立ち上がりかける。そこにグラードからするりと手を差し出された。 「アシェラ。おいで」    顔をあげると王太子仕様のグラードが微笑みかけてくる。渋々と手をのせたアシェラを、グラードは訪問中の使節団の前に連れ出した。 「妻のアシェラだ。アシェラ、ドートル王国からの使節団に挨拶を」 「……ようこそ」  格下の王国相手でもギリギリの挨拶。愛想のかけらもないアシェラの態度を、使節団は全く気にしなかった。   「……ッ!! なんとお美しい……噂には聞いていましたが、これほどとは……」 「あまりの美しさに言葉もありません……本当に、なんて……」  宝物を溜め込むドラゴンの厳しい審美眼。そのお眼鏡に適ったアシェラを、外交官は舐めるような視線でうっとりと眺めた。グラードが眉をぴくりと震わせる。 「ああ、そうだろう? 我が掌中の珠のあまりの美貌に、俺の心は休まる暇もない……」    変わり映えのない賛辞を聞き流していたアシェラが、グラードに引き寄せられる。そのまま見せつけるように、口付けが落とされた。使節団の面々が驚いたように目を見開く。   「我が妻、アシェラ。俺は席を外さねばならない。戻るまでいい子にしているんだぞ」 「……はい」    急な口付けを訝しみながらも、アシェラは大人しく頷く。使節団を連れ奥の間にグラードの姿が消えると、アシェラはニヤリと口元を歪めた。  外交の前哨戦も兼ねた夜会。グラードはしばらくは戻れないはず。ずっとこの日を待っていた。ずっと胸に蟠っていた疑問の解消にうってつけの夜。バサリと扇を広げ、アシェラはゆっくりと会場に視線を巡らせる。 (ふふっ……アレがいいわ)  グラードの姿が消えた会場で、一際視線を集める男。騎士の正装に身を包んだ男に、アシェラは狙いを定めた。カツンと踵を鳴らし、ゆっくりと歩き出す。会場が声もなくざわりと揺れた。  肌を出すなというグラードの厳命に、極限まで露出は抑えられたドレス。それでも完璧な曲線を描くアシェラの身体を、隠すことはできていない。龍が掌中から一時も離さない宝玉の美貌に、こそこそと声を潜めていた者でさえ言葉もなくただ息を飲んだ。  ゆったりと歩くアシェラと、騎士の距離が近づく。視線を釘付けにされた騎士が、熱に浮かされたようにアシェラを見つめている。すれ違いざま扇の陰で小さく微笑みを浮かべ、そのままアシェラはテラスへと向かった。 「……風が、冷たくはありませんか?」  かけられた声にアシェラは、ゆっくりと振り返り口角をあげた。 「……火照った身体には、冷たい風が気持ちいいの……」 「ああ、酔われたのですね。静かなところで休まれてはいかがでしょう」 「そう、ね」 「……お、お足元がご不安でしょう。よろしければ私が、お部屋にお連れします……」  目元を赤く染めて、乞うように視線をすがらせる男に、アシェラは微笑んだ。跪くように差し出された手に、アシェラは嫣然と微笑み手を伸ばす。  テラスから中庭に出て歩を進める間も、熱っぽい視線が注がれているのを感じる。人気のない回廊を抜け、休憩室の扉が閉まった瞬間、アシェラは男に抱きすくめられた。  体温を上げた逞しい身体が、アシェラの細い身体を絡め取り、熱を帯びた吐息と共に切実な愛のつぶやきが落ちた。 「……アシェラ様……私の女神……ずっとお慕いしておりました。ようやく私を見てくださった……たった一度でいい。触れることを許して下さるのなら、私は地獄に落ちても構いません……どうか……!!」  骨張ったい大きな手が、たまらなげにアシェラの身体のラインを撫でる。興味を惹かれない愛の言葉を聞き流し、アシェラはうっすらと笑みを浮かべた。  微笑みをどう受け取ったのか、男は歓喜するように瞳を大きく揺らし、背を丸めて口付けにかがみ込んできた。アシェラは近づいてきた唇を、手のひらを差し込んで拒んだ。()()は必要ない。 「……ア、シェラ様……」    傷ついたように瞳を揺らした男に、アシェラは少し面倒になった。口付けなどいらないのだ。アシェラが興味があることは一つだけ。()()を確かめること。 (やっぱりグラードより背が高い)  グラードに似た体格だから選んだ男。アシェラは男の服に手を伸ばした。意図を察した男が、焦れるように衣服を脱ぎ始める。  その様子をアシェラは、じっと見守った。果たして本来グラードの体型なら、一般的な()()はどの程度のなのか。  絶対普通じゃないグラードのアルティメット。毎度あの魔物にいいようにされ続けている。本来のモノがどの程度なのか。普通を知らないアシェラは、ずっとそれが気になっていた。 (服の上からだとイマイチ分からないし……)  夜会会場で一生懸命股間を凝視しても、はっきりとは分からない。ちょうどグラードと体格が似ていて、背はグラードより高い男。  視覚的に確かめたついでに、この際寝てみるのもいいかもしれない。本来、どの程度で済むモノなのか。どうせついでだ。湧き上がる好奇心を満たすのも悪くない。  期待に胸を弾ませるアシェラの目の前で、騎士服の男は息を荒げて、剥ぎ取るように服を脱ぐ。もう反り立たせているソコを見つめながら、姿を現す瞬間をアシェラが見守った。  ぶるんととうとう眼前に飛び出したモノ。アーシェはぴくりと肩を揺らして動きを止めた。腹筋に触れるほど立ち上がったソコを、じっと見つめる。 (……これが、普通……)  だいぶバナナに似てる。なんかグラードより短いし細い。あとぼこぼこしてない。アシェラは首を傾げた。 (オーラも出てないわ……)  禍々しいオーラを放ち、アーシェの奥を疼かせる、あの威容も感じない。これが普通なのか。  悍ましいほどの魔物を見慣れていたアシェラは、問うように顔を上げた。目元を高揚させた男が、アシェラの頬に手を伸ばす。 「……ああ、怖がらせてしまいましたか? 大丈夫です、アシェラ様。確かに普通より立派ですが、これでなくてはもう満足できなくして差し上げます。だからどうか……」  興奮して掠れる男の言葉にアシェラは、わずかに目を見開いてまたバナナに視線を落とした。 (……これで? 大きいの? 本当に?)  じゃあ、グラードのはなんなのか? ピンと上向くバナナを見つめているうちに、アシェラは沸々と怒りが湧き上がってきた。  バナナでちょっと大きめなら、アシェラが受け入れさせられてる魔物は、なんなのか。やっぱり本来あってはならないサイズだとしたら、そんなものに勝てるわけがない。  勝てない勝負に挑まされ続けたと知り、アシェラはフルフルと怒りに肩を揺らす。男が宥めるように甘く囁きかけた。 「アシェラ様、私の女神……ようやく私に与えてくださったこの機会……優しくいたします。だからそんなに怯えないで……」  男の手がアシェラのドレスにかかる。その瞬間、扉が勢いよく開け放たれた。 「アシェラーーーー!!」 「で、殿下……!!」  怒りの咆哮に顔色を青ざめさせた男が、たたらを踏んでへたり込む。元気に上向いていたバナナが、急速に縮こまりしゅんと下を向く様に、アシェラはますます怒りが募った。  未使用時の大きさは、グラードと大差なかった。膨張時の差分がアルティメット。とんでもないものを突っ込まれていた。  鬼の形相で男を一瞥すると、グラードはツカツカとアシェラに歩み寄った。そのまま無言で担ぎ上げると、瞳を爛々と怒りに燃やしながら歩き出す。たどり着いた私室の寝台に、アシェラを乱暴に放り込んだ。 「アシェラ! よくも他の男と……!!」  怒りに喉を詰まらせ言葉すら途切れるほど怒り狂ったグラードに、アシェラも負けじと猛然と食ってかかった。 「バナナだったわ!! 普通はバナナなのに、あんな魔物を私に突っ込んでいたなんて!!」 「……ほう? 俺の妻は夫の留守の隙に他の男のモノを、ずいぶんしっかりと確かめたようだ。それで俺に見つからなければ、あのバナナをお試しでもするつもりだったか?」 「もちろんそのつも……」  怒りに任せて声を張り上げかけ、壮絶な怒りに爛々と瞳を光らせるグラードにひくりと口を閉じた。一切の笑みもなく、感情がこそげ落ちた無表情。アシェラが震え上がった。  アシェラが何かするたびに、すっ飛んでくるグラード。薄ら笑いを浮かべて、叱りつけては寝台で抱き潰す。でもアシェラを見下ろす瞳は、いつも愛し気に細められていた。温度のない冷たい金色の瞳が、今本気の怒りを湛えていた。 「ハッ! あの男はお前の靴舐め隊の一人だったな? いつから繋がっていた?」 「……そう、でしたか……? た、ただ私は、普通を確かめたくて……」  覚えてない。震える唇で必死に言い訳を押し出すも、グラードからは冷ややかな声で返される。凄絶な怒りを宿した縦にキレた瞳孔が、底冷えする光を放っていた。  グラードの手が伸び、アシェラの頬を掴んだ。上向かされた視線が、至近距離で龍の瞳に囚われる。 「た、たまたま目についただけで、貴方と体格が似ていたから……同じ体格での普通を確かめようとしただけで……何もないわ。ふ、普通を見るだけのつもりだったわ……だから……」 「見て、ね。そうか、普通を知りたかったと。美しい俺のアシェラ。その単なる好奇心で、俺の心を殺そうと?」 「そんなこと……! ちょっと遊ぶだけで……!」 「ああ、やっぱり寝るつもりだったんだな?」 「あ……」    怒りを鎮めようと言葉を重ねるほど、墓穴は深くなる。誰かの機嫌を取る。そのために言い訳する。これまでそんな行動をしたことのないアシェラは、オロオロとより深い墓穴を必死に自ら掘り進めた。   「ほ、本気じゃないわ……ちょっと試してみるつもりで……」 「アシェラ、お前は何もわかってなどいないのだな。俺がお前を妃にした理由も何もかも。ああ、確かにお前はそういう女だ……」 「私は……」 「かわいい俺のアシェラ。これは俺の失態だ。浮かれて油断するべきではなかった。俺専用の俺だけの女にしても、お前は元々そういう女だ……いいだろう。やんちゃな妻の躾は夫である俺の役目だ。二度と俺以外の男の手に、身を委ねようなどと思わぬよう、徹底的に躾けてやる」  ゆらりと立ち上がったグラードが、飾り棚の扉を開ける。無言で飾り棚を漁っていたグラードが、無言のまま振り返った。  その手握られているモノに、アシェラは血の気を引かせてガタガタと震えた。グラードの手には、あのバナナに酷似した張子が握られていた。 「アシェラ。これがなんだかわかるか? お前がサボり倒した閨教育で使われる、()()のモノの模型だ。お前がつまみ食いしようとした普通だ。好きなだけ試させてやろう」  不穏に口角を釣り上げたグラードに、アシェラは怯えきって首を振った。   「も、もう見たからいいの! どの程度かわかったもの! だから……」  プルプルと縮こまるアシェラに、グラードはゆっくり近づいた。そのまま耳朶に唇を寄せ、色のない声で囁いた。 「いいや、分かってない。アシェラ、覚悟しろ。浮気が簡単に許されると思うなよ」  アシェラは龍の逆鱗に触れたことを知った。 ※※※※※ 「ふぅっ……んっ……はぁ……グラードォ……」 「どうだ? 浮気者の我が妻よ。標準的な男はお前を満足させてくれそうか?」 「んぁ……これやだぁ……抜いてぇ、グラードォ、抜いてぇ……」 「ダメだ。ちゃんと味わえ。かわいく泣いて見せても、今日ばかりは許さない」  にちにちと音を立て、胎内に埋め込まれた異物に嫌悪しか感じない。自分のソコがこれじゃないと、追い出そうと蠢いているのが分かった。  膣壁が張子を吐き出しても、グラードはまた奥へと無造作に押し込んでくる。全然気持ちよくない。それどころか、何かが入っている感触が気持ち悪い。 「これじゃないのぉ……これいやなのぉ……気持ち悪いよぅ……抜いてぇ、お願いだから……抜いてよぉ……」  シクシク泣き出したアシェラを、グラードが冷ややかに見下ろした。金色の瞳が徐々に輝きを増し、瞳孔がゆっくりと縦になっていく。 「そうだよな? これじゃないよな? じゃあ、何が欲しいんだ? アシェラが欲しいのはなんだ?」  濃くなる龍の気配に、とろりと瞳を蕩けさせたアシェラが、胎の奥から突き上げてくるような衝動に喘いだ。 「あ……あぁ……グラードが欲しい。グラードじゃなきゃやだ……お願い、グラード……」 「かわいい俺のアシェラ。理解できたか? お前は龍の女で、俺専用の俺だけの女だ。俺以外で二度と満たされることはない」 「分かったからぁ……だから抜いて! 早く抜いて!」  にゅじゅると引き抜かれた張子に、嫌悪感が薄れアシェラはホッと息を抜いた。力の抜けたアシェラの腰が引き寄せられ、予告なくドラゴンが突き入れられる。 「んああああーーーーー!!」  全身を貫く快楽と歓喜に、アシェラが絹を裂くような悲鳴をあげた。ずりずりと魔物が隘路を擦りたてるたびに、鮮烈な快楽に砕けたように腰が抜け無意識に揺れ動く。張子の不快感からの愉悦への落差が、甘い快楽に幸福感をもたらした。 「ふぅぁ、ああ……気持ちいい……気持ちいいよぉ……」 「う……あぁ、アシェラ、欲しいのはこれだな? これが欲しかったんだろ?」 「はい……はい……これがいい! これだけが欲しい!」 「かわいいアシェラ。お前は誰の女だ?」 「グラードのぉ……グラードだけの女なのぉ……ああっ! いいっ! もっとしてもっと! あぁ……いい……いきそう……いきそう……!」  穿たれる腰に夢中になって腰をくねらせ、快楽に蕩けた舌足らずの声で喘ぎをこぼした。子宮をずしずしと揺らされる快楽に溺れ、湧き立つような熱が弾けようとした瞬間、グラードがぴたりと動きを止めた。  一瞬何が起きたか分からないように、ぼんやり瞳を開けたアシェラが、見下ろすグラードの表情にうるりと顔を歪ませた。 「やだぁ……グラードォ……やめないで……お願い……いきたい、グラードォ……!」 「考えたんだが、浮気する妻を悦ばせるのはおかしくないか?」 「考えないでぇ! 今考えないでぇ! 後で考えてよぉ……なんで今なのぉ……」 「俺は愛する美しい妻に、浮気をされそうになって深く傷ついている。それなのに浮気した妻を悦ばせるのはおかしいだろう?」 「おかしくないもん! 妻だもん! グラードォ、意地悪しないでよぉ……」 「アシェラ、あのバナナを呼んできてやろうか? バナナで楽しむつもりだったもんな?」 「……うぅっ……いらないぃ! ごめ、なさい……ごめんなさい……二度としないからやめないで……グラードがいいの……グラードじゃなきゃダメなの……ごめんなさい……許して……」  ボロボロ泣き出したアシェラに、グラードは金色の瞳を蕩けるように細めた。汗で張り付いた蜂蜜色の髪をかき上げ、メソメソ泣くアシェラの額に頬に首筋に、何度も何度も口付けを落とした。 「もうしないか? アシェラ。二度と俺の女を他の男に触らせないと誓うか?」 「ふぅ、うぅ……誓う、わ……誓う、から……二度としないから、お願い許して……」 「約束だぞ、俺のアシェラ。お前は俺だけのものだ」 「はい……はい……」 「浮気したら二度と抱いてやらないからな」 「……っ!! 絶対しないわ!」 「いい子だ、俺のかわいいアシェラ。愛してるよ……」  ゆるゆると始まった優しい抽送は、切実に潤む隘路を愛おしげに擦りたてた。ボコボコと隆起する妖物が、膣壁の至る所を刺激して、最奥に穂先が当たるたびにジワリと快楽が胎から広がる。  身体の境界が曖昧になるような緩やかな快楽に、アシェラが甘い吐息を吐き出しながら、腰を揺らした。 「はぁ……あっあっ……グラード……グラード……」 「アシェラ……アシェラ……俺の愛しいアシェラ……愛してる……愛してる……」 「グラード……いい……いい……あぁ……もう……グラード……!!」  緩やかに確実に押し上げられていく快楽の頂から、ふわりと浮き上がるようにアシェラは静かに絶頂した。噛み殺した呻きを上げ、グラードも最奥にどぷどぷと煮えたぎった白濁を吐き出す。灼熱の熱が胎にいっぱいに広がるのを感じて、アシェラは幸福感に包まれながら、ゆっくりと目を閉じた。揺蕩うような快楽と恍惚に、アシェラは泣きたくなった。 (……私はもう、グラードだけのもの……)  所有するのではなく、所有されている。それが嫌ではなかった。胸に抱いた幸福感と共に、眠りに落ちようとしたアシェラの下腹部が、ゴリっと深く抉られた。  ギョッと目を開けたアシェラは、金色の瞳がギラギラと欲望に輝いているのを見つけた。あわあわと這いずった身体を強く引き寄せられる。 「……グ、グラード……私はもう……」 「さて、愛しい我が妻? まさかもう許されたとは思っていないな?」 「だ、だって……今日はもう……」 「最高に悪い子だった妻に、()()()手加減は必要ないな?」    引き寄せられた腰を抑えられたまま、グリッと魔物が向きを変える。四つん這いにされたアシェラの最奥に、もうアルティメットした魔物が、遠慮なく突き入れられた。 「ひぁあっ!! やぁ! グラード! もうだめ! もういらない!」 「いるかいらないかは俺が決める」  言うなりずんずんと始まった律動に、余韻が落ち着きかけていた身体に、貫くような快楽が迸った。 「やぁ! だめぇ! グラードォ……もうだめ……おかしくなる、気持ち良すぎておかしくなっちゃうのぉ……」 「おかしくなるといい、アシェラ。どんなお前でも隅々まで愛してやろう……」  泣き出した美しい妻の細腰を掴まえて、グラードは自分だけの専用になった媚肉に、妖物を突き立てる。龍を悦ばせるための身体は甘く蕩ける快楽で、グラードに恍惚とした快楽を与えてくる。 「あぁ……アシェラ……私の美しい妻……お前が唯一の俺の宝だ……」  日頃のちょっとした悪さをしでかす気力も残らないお仕置き。それが実は本当は手加減されていたことを、アシェラはこの日、身をもって教えらることになった。 ※※※※※ 「……ねぇ、アシェラ様のあの首飾り……」 「そんな……違うわよね? ……グラード様がそんな……」  使節団を見送る夜会。最高にご機嫌のグラードの横で、アシェラは最高にむすくれていた。華奢な白い首元を、王家の紋様ととりどりの宝石で彩られた宝飾品が飾っている。  一見するとアシェラが好みそうな宝飾品は、中央は宝石ではなく金のプレートになっていた。近づいた者は、そのプレートに文字が書かれているのが確認できた。 『反省中。龍専用のためバナナお断り』  何かしでかしたらしい。察した人々は、いたずらのお仕置きを受けている、猫のような王太子妃に口を噤んだ。  むっつりと不機嫌でも、輝くように美しいアシェラに、グラードは甘く囁きかける。 「かわいい俺のアシェラ、今日はいい子にしているな?」 「…………」  プイッと顔を背けたアシェラに、グラードは喉奥でくつくつと笑った。    その昔、たくさんの財宝を愛でる龍がいた。さらなる宝を探しに出た先で、ドラゴンはドラクル王国の王女の美しさに心を奪われた。  どんな宝物より美しい宝を見つけたドラゴンは、全ての宝物を差し出して王女に愛を乞うた。  そして己に呪いをかけた。よき王として生きること。唯一の宝を愛し続けること。その誓いに背けば、ドラゴンの力を失うようにと。  その呪いは子々孫々に受け継がれ、よき王として文武に励み、唯一の宝を定めたものだけが覚醒を許されるものとなった。優れた頭脳と強靭な身体。確実に子孫を残せるアルティメットなドラゴン。  その全ては己の唯一を守り抜くために、祖先から与えられる龍の恩恵。  妃教育もおざなりのままプリプリしている、美しい(アシェラ)はいつ気づくだろうか。  唯一を得て覚醒したグラードには、()()()()()()()()ことを。  何度でもしでかすといい。何度でも思い知らせるから。美しいアシェラが、ボロボロと涙をこぼす姿は眩暈がするほど愛らしい。何度見ても飽きることはない。  グラードがそっと、アシェラを引き寄せた。 「我が妻、アシェラ……お前はとても美しい……」    特製の反省プレートに不機嫌丸出しのアシェラは、甘く囁き愛しげに口付けを落とすグラードにむすくれている。  グラードのアシェラを見つめる愛しげな眼差しに、会場が息を呑んでざわりと揺れた。     ※※※※※    いつもスタンプやスターの応援ありがとうございます。  悪辣令嬢、媚薬を盛るにメインサイトでリクエストいただき、書き上げた後日談になります。  楽しんでいただけたら幸いです。
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