悪辣令嬢、夫の心知らず 3

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悪辣令嬢、夫の心知らず 3

 グラードの執務室の扉が叩音を響かせた。一拍のち礼儀正しく入室してきた事務官に、グラードがものすごい勢いで振り返る。  その勢いに事務官が驚いて息を呑み、助けを求めるように補佐官に視線を縋らせた。 「あ、の……予算編成書のお届けに……」 「……私がお預かりいたします」  オロオロとする事務官に、補佐官は安心させるように微笑みかけた。勢いをなくし心なしか気落ちしたように椅子に座り直したグラードを気にしながら、書類を手渡した事務官は戸惑いつつ執務室を退室していく。  閉まる扉を未練がましく見つめるグラードに、補佐官は小さく首を振ると書類を執務机に置いた。 「殿下、アシェラ様は淑女教育を熱心に受けておられるそうです」 「……そう、か」  深く息をついて額を覆いグラードは俯いた。その様子に補佐官達は困ったように眉尻を下げた。  アシェラが大人しくなって、もう二週間。婚姻し王宮入りしてからも三日と空けずやらかしては、グラードがすっ飛んでいっていたのが嘘のように静かだった。  今アシェラは王家の用意した家庭教師ではなく、自ら実家の公爵家の伝手で教師を用意するほど、士気高く教育を受けている。  招かれた伯爵夫人は実績もあり、何よりあのアシェラが熱心に学んでいる。おやつはバナナらしい。割と食べている。  ついに改心したかもしれない王太子妃の変化を、補佐官達としては歓迎したかった。   「王宮でもアシェラ様の熱心さに、()()()()()()()()()()を持ちはじめる者が出始めています」 「そうか……」    咲き誇る薔薇の美貌への賞賛とセットで轟く悪評。その悪評が鳴りを顰めるほど、私室で籠って勉学に励むアシェラ。そう、喜ぶべき。アシェラが大人しく学んでいることを。グラードはそう自分に言い聞かせた。 (アシェラ……)    瞼に浮かぶ愛しい妻の名を呟きグラードは、止めていた手を再び動かし始める。王宮はとても静かで、今日もグラードが駆けつける事態は起きることはなかった。無言で執務に戻る王太子に、補佐官達は心配そうに顔を見合わせた。    執務を終えたグラードは、夫婦の寝室にそっと滑り込む。広い寝台にはすでに妻のアシェラが、安らかな寝息を立てていた。  隣に身を滑らせて、グラードはアシェラの寝姿を見つめる。息を呑むほど美しい妻。寝具に広がる見事なハチミツ色の髪を梳き撫でて、その髪に口付けすると胸が詰まるほどの愛おしさが込み上げてくる。一目で心を掴まれた五年前から、日々募り続ける愛おしさ。 「アシェラ……お前は今日もいい子だったな……」  起こさないように顰めたグラードの呟きが、ポツンと落ちる。本当に最近のアシェラは、とてもいい子だ。丹念に言い聞かせていた妃としての自覚が、ようやく芽生えたのかもしれない。  鮮烈に刻みつけてくるこの美貌に教養までも加わってしまえば、アシェラ以上の王妃などどこを探しても見つからないだろう。  王宮の者は皆、この変化を歓迎している。全然脱走しないし、怪しげな夜会に繰り出す画策もやめた。国庫を空にする勢いでドレスも宝石も買い漁ることもしていない。だから日に二、三度必要だった()()()()に、グラードが駆けつけることも無くなった。  愛らしい寝顔を晒すアシェラに、グラードはそっと手を伸ばした。白い滑らかな陶器の頬を包み込む。大人しく宮に籠り真面目に妃教育を受け、疲れて眠る妻。グラードは小さくため息を吐き出して、アシェラの頬から手を離した。 「……喜ぶべきだ」  傲慢で高飛車。悪辣でふしだら。悪評高いアシェラが、真面目に学び始めたのだから。  醜聞のたびに嫉妬にのたうち回り、血を吐くような思いで振る舞いを諌め続けた。膨れ上がった嫉妬心に絶えきれず、五年間の婚約の解消を決意した夜。どれほど苦しかったか。  それが報われようとしている。そんなアシェラが変わろうとしている。いずれ国母となるアシェラの変化を喜ぶべきだ。 「……なぁ、かわいい俺のアシェラ」  妻を諌め良き王妃に導くのも、良き王としての当然の務め。覚醒したグラードはよき王であり続けなければならない。選んだ伴侶の言動もグラードの責任だ。それすらも覚悟してアシェラを妻にした。だから、 「無理はしなくていいんだぞ?」  全部グラードが余裕で担える。アシェラが覚醒させたドラゴンの力で。いつだって俺がそばにいる。ちゃんと目を光らせておく。後始末も教育も全て、グラードの責任であり権利だ。  どこで何をしたとしても、俺が叱りつけ正してやる。アシェラに関わる全てが喜びで、苦になることなど一つもない。だから。 「……少しくらいいいんだぞ?」  突然いい子になってしまった愛しいアシェラは、深い眠りの底にいて何も応えてはくれない。グラードは諦めたように小さくため息を吐き、疲れて眠る妻の安眠を妨げないように囁いた。   「……おやすみ、愛しい俺のアシェラ」    美しい寝顔にそっと口付けを落とすと、眠る必要はなくても愛しい伴侶の隣で瞳を閉じる。アシェラが大人しくなってから、触れ合えずにいる妻。せめて安らかに眠る妻の気配をすぐそばに感じていたかった。 ※※※※※   「……っ!! まさかそんな……嘘でしょう……!?」  衝撃に目を見開いてアシェラは、ぐっと身を乗り出した。向かいに座るのは教師の伯爵夫人……ではなく、伯爵夫人が毎回伴ってくる侍女。  影のように仕える主人に付き従うべき侍女の、地味なお仕着せを着ていても教師を務める女の退廃的で、咽せ返るような色香は隠しきれていなかった。 「……ふふっ。アシェラ様、その程度で驚いてはいけませんわ。その後はこのようにして挟み込むのです!」 「……本当に?」  黒子のある扇状的な口元を微笑ませての実演に、アシェラばかりか淑女教育で名を馳せた伯爵夫人も、衝撃に瞳を見開いて身を乗り出した。 「ですが、ステラーチェさん。本当にそんなことが……?」 「まあ、信じられませんか? ですがすごい効果なんですよ? 感覚よりも視覚に意味があるんです。これでこうしている、それが大事なんです。その上でこんなふうに……ね?」  すごい。そんなことまで! にわかには信じられないステラーチェの応用編の実演に、アシェラと伯爵夫人は口元を押さえた。 「では練習してみましょうか。アシェラ様も伯爵夫人も十分資格をお持ちです。ですがそれだけではダメです。練習してコツを掴みましょう」  こくこくと頷いたアシェラと伯爵夫人(生徒)に、ステラーチェ(教師)はにっこり微笑んだ。 「いえ、いきなりそうするのではなく、まずは空間を……いえ……教材を持ち込めればいいのですが、持ち物検査がありますし……ええ、そうです。そのまま両手で強く押しつぶすように……そうです、お上手ですわ。大丈夫ですよ。強くしても痛みはありませんから……」  熱心な生徒達に、教師も指導に熱が入る。()()の職場に打診がきた時は断りたいと思っていた教師役。断りたくても公爵家からの依頼。その上()()の稼ぎの二倍の提示。渋々引き受けたが気難しい貴婦人達は、未知の知識らしい指導に意欲を持って食いついて来る。 (あと、三日間なのね……)  本来は対立する関係だろう貴婦人達への、奇妙なレッスン。それももうすぐ終わる。ちょっとだけ寂しく思いながら、ステラーチェは熱心な生徒達のためにさらに指導に熱を込めた。 ※※※※※  今日も平和だった王宮にため息をつきながら、グラードは夫婦の寝室の扉を開けた。 「おかえりなさい、グラード」 「アシェラ?」  迎えた鈴の音のような声に、驚いて顔を上げる。今日も疲れて眠っていると思っていたアシェラは、スラリと立ち上がり挑戦的な声音を響かせた。 「貴方を待っていたの……」  立ち上がったアシェラの完璧なシルエットを、窓から差し込む月光が美しく浮かび上がらせる。輝くハチミツ色の髪をさらりと払ったアシェラの表情に、グラードは僅かに眉根を寄せた。  愛してやまない美しい妻は、その花の(かんばせ)に自信と奸計を匂わせている。どう見てもやらかす気満々だ。  薄い夜着姿のアシェラは挑戦的な微笑みを浮かべながら、ゆっくりとグラードに歩み寄ってくる。  眼前まで詰めてきたアシェラが、美しい微笑みを浮かべたままグラードの肩を押した。なすがままグラードは、寝台へと両肘をついて倒れ込む。嫣然と笑みを浮かべたアシェラは、昂然と顎を逸らしてグラードを見下ろした。 「……ねえ、グラード? はっきりさせましょう? 従うべきはどちらなのかを……」  呆然とグラードは自信に満ち溢れて輝く、アシェラを美貌を見つめていた。 (あぁ、美しい我が愛しき妻アシェラ……やはりお前は……)  少しも変わらない。いい子の皮を脱ぎ捨てて、ちっちゃくて愛らしい牙を剥き出しにしたアシェラ。本当に悪い子だ。  満を持して挑んでくるアシェラに、グラードは口角をゆっくりと釣り上げる。 「俺のかわいいアシェラ……お前は悪い子だ。お前が俺をわからせられるのか、お手並み拝見だ……」  金色の瞳をとろりと蕩けさせたグラードに、アシェラは高慢にするりと夜着を肌に滑らせた。 「ん……っ!!」  苦しそうに息を詰まらせたアシェラが咳き込む。アシェラは美しい瞳を潤ませて、かなしげにグラードを上目遣いに見上げた。  敗北が早い。噴き出しそうなのを必死に堪えながら、しょんぼりとするあまりにも可愛いアシェラを見下ろす。グラードは甘く蕩けた声で、うっとりとアシェラに問いかけた。 「どうした俺のアシェラ? それで終わりか?」  出方を窺うグラードの股間に、アシェラは無言で視線を落とした。  棍棒ほどに育ったアルティメットドラゴン。ボコボコと血管が隆起し、禍々しいオーラを放つ魔物。アシェラは魔物とグラードとを交互に見やる無言の葛藤の末、キッと目元に力を漲らせると再び挑むことにしたようだ。  ドラゴンをガシッと掴むと、そのままぽてりとした赤い唇を穂先に押し当て、ドラゴンの凹凸を舌でねっとりと舐め上げる。思わずグラードは吐息を零し、びくりと反応した妖物がアシェラの陶器の頬をびたんと打った。 「……っ!!」    ドラゴンに打たれたアシェラは、打たれた頬に手のひらを添えてわなわなと震えた。アルティメットしていたせいで攻撃力が高かったらしい。細い肩が震えだす。 「あー……アシェラ、大丈夫か……?」  気遣わしげな声で問うグラードに、頬を抑えて押し黙っていたアシェラがグッと瞳を怒らせた。 「……てよ……!! 縮めてよ! 今すぐ!! こんなの何にもできないじゃない!! せっかく勉強したのに!!」 「勉強……?」  ドラゴンの思わぬ反撃にブチギレ出したアシェラに、グラードが眉を顰める。 「私がどれだけ真面目に勉強したと思ってるの!! 口でするやり方も、おっぱいに挟む方法も覚えたのに!」 「……なんだと?」  グラードの声が不穏に低まり、金色の瞳を眇めたことにも気づかずアシェラは憤然と憤りを吐き出す。 「「ワンナイト」のナンバーワンよ! 直伝なのよ! それなのに貴方のドラゴンがアルティメットするせいで、何もできないじゃない!! 縮めてよ!! 今すぐ!!」 「こらっ! アシェラ、叩くな!」  禍々しいオーラを放つ股間の魔物を、アシェラが怒りの形相でペシペシと叩く。グラードはアシェラの手首を掴み取り、宥めるように頬を撫でた。   「ワンナイトとは王都の高級娼館のことか? どうやって……ああ、淑女教育か……」  グラードの問いにアシェラは、怒りに瞳を潤ませながら頷いた。  実家経由で淑女教育権威の伯爵夫人に話を持ちかけた。夫人を隠れ蓑に王都一の高級娼婦を侍女として来宮のたびに随行させた。  それも全て閨での主導権を取り戻す、手管を手に入れるため。グラードのアルティメットにぐずぐずにされているうちは、アシェラが望む生活を手に入れることはできない。  これまでの雪辱を晴らしうるさい小言を封じるためにも、アシェラはかつてない程勉学に勤しんだのだ。閨の。 「伯爵夫人はうまくいったのに……」  夫の愛人問題に思い悩んでいた伯爵夫人。ステラーチェの指導を受けて、あっさりと夫は陥落したらしい。愛人そっちのけで跪いて、夫人の赦しと夜を懇願されていると感謝の手紙が届いた。それなのに。  アシェラは完全に失念していた。アシェラの倒すべき相手はバナナではなく、禍々しいオーラを放つ棍棒サイズの凶悪なドラゴンであることを。敗因、アルティメットドラゴン。 「なんで私のは……」    バナナじゃないのか。悔しそうにボロボロと涙をこぼすアシェラの頭を、グラードは宥めるように撫でた。 「……俺のかわいいアシェラ。お前は俺のモノを口に入れたり、その胸で挟み込もうと思っていたのか?」  ぐずっと鼻を鳴らしたアシェラが、しょんぼりしながらこくりと頷いた。グラードはグッと奥歯を噛み締めた。可愛すぎる。この時ばかりは己がバナナじゃないことが悔やまれた。  本当に一生懸命学んだのだろう。王宮中が改心したのかと思い始めるほど懸命に。真剣に頑張ったからこそ、失望は大きいようだ。ボロボロと涙をこぼすアシェラを、グラードは優しく撫でて慰める。 「……アシェラ、もう一度頑張ってみるか? 俺も頑張って縮まるように努力するから」  されたいし。協力を申し出たグラードを涙で潤んだ瞳で見上げ、アシェラは涙を拭って頷いた。再びドラゴンと向かい合ったアシェラに、グラードは必死に息を止めた。小さくなれと祈りながら。  アシェラが豊かなたわわな胸を両手で外に押し開き、グッと上体を寄せてドラゴンを挟もうと胸を中央に寄せる。バナナになら間違いなく勝利していただろうアシェラの胸は、残念ながらドラゴン相手には歯が立たなかった。 「挟めない……」  震える声で呟いたアシェラに、思わずドラゴンがズクリと反応する。さらに膨らんだドラゴンに、アシェラは一瞬息を飲み泣き出した。 「嘘つき! 全然小さくしてくれないじゃない……! 騙して馬鹿にしてるんでしょ!!」  泣き出したアシェラの腕を引っ張り上げ、引き寄せると抱き込んで慌てて宥める。 「違う、アシェラ。アシェラが可愛すぎてだな? 泣くな、悪かった。な?」 「どうしてくれるのよ! せっかく、せっかく覚えたのに……!」 「ごめん、アシェラ……泣くな……挟めなくて残念だったな? 頑張ったのにな? 俺も本当にできることならどうにか縮めたい。ごめんな、俺のかわいいアシェラ……」  あちこちに唇を落としながら、グラードはシクシクするアシェラを慰める。本当にできることなら縮めたいのだ。正直残念に思う気持ちはアシェラより、グラードの方が上だと思う。腕に抱き込んだ妻が、可愛すぎてどうにかなりそうだった。 「……なぁ、アシェラ。習ったのはそれだけか?」  グラードの問いに、アシェラは顔を上げた。他にも何かあってくれ。祈るようなグラードの金の瞳を見つめながら、アシェラは懸命に学んだ授業の内容を思い返す。 「口でして……おっぱいで挟んで……それから……」  言い差したアシェラが言葉を止め、ゆっくりと目を見開いた。口元をゆっくりと笑みに釣り上げる。 「……アシェラ?」  言葉を切ったアシェラを覗き込もうとしたグラードは、爛々とした瞳の輝きを取り戻したアシェラに肩を押されて寝台に倒れ込んだ。グラードが見上げたアシェラは、再び高慢な笑みを取り戻している。 「……私がこの程度で負けを認めると?」  よかった。まだ何かあった。ドラゴンに折れかけていたアシェラが、起死回生の一手を思い出したらしい。グラードは胸を撫で下ろす心地で、勝ち誇るアシェラを見上げた。  アシェラがグラードの顔の横についていた右手を、グラードの腹筋をなぞりながら移動させ、自身の下腹部に導いた。思わずごくりと唾を飲み込んだグラードの視界が、近づいてきたアシェラに覆われる。  重なった唇の甘さに夢中で舌を絡ませながら、覆われた視界の先の光景の想像に、またどくりとドラゴンが膨らみを増す。 「ん……ふっ……あぁ……」  アシェラが弾む呼吸に唇を離しドラゴンには敗北した豊かな胸を、たゆたゆと揺らしながら身をくねらせる。アシェラが腹に跨り自身のソコを捏ね回し、クチュクチュと卑猥な音を奏でる光景にグラードは喉を鳴らした。思わず伸ばした手が押さえつけられる。 「んぁ……はぁ……あ……ダメ、です……見せつけるのも……だ、大事だって……んんっ……」 「あぁ……アシェラ、いいか? そんなに腰を揺らすほどいいのか?」 「あん……いい……気持ちいい……」  今回ばかりはアシェラの人選を褒めてやりたい。恍惚と頤を逸らして喘ぐ美しい妻の淫らな痴態に、グラードの脳が揺れる。溶け始めた理性に金の瞳が輝きを増して、瞳孔が縦に切れ上がる。龍の気配にアシェラの喘ぎが甲高く翻った。  龍専用の女の身体がドラゴンを求めて疼き出し、アシェラの見せつける手淫から余裕が消える。なりふり構わず絶頂を目指す動きに、グラードは唇を舐めた。 「いくんだろ? アシェラ、俺にイキ顔を見せろ」 「あ、あ、あ、いくの……いくの、グラード! ああっ! いく! ああ、ああーーーー!」  肢体を弓形に反らせて絶頂したアシェラに、言いようのないほど興奮を覚えて、余韻にゆるやかに腰を揺らしながら、グチュグチュと音を立てて下腹部を弄り続けるアシェラを引き寄せる。  奪うように口付けて、組み敷いたグラードにとろりと蜜を垂らすアシェラのソコに、限界まで怒張したドラゴンを擦り付けた。  絶頂したソコに隆起した魔物に刺激され、泣きそうな声を重なった唇からこぼすアシェラ。耐え難い衝動を擦り付けて堪えながら、グラードは龍の気配を濃くして爛々と瞳を光らせた。 「アシェラ、それで終わりか? 俺にわからせてくれるんだろ?」  揺れる胸の尖った頂きをつねり上げると、アシェラが震える喘ぎをこぼした。   「ふぅ……んぁ……わ、私が跨ってイカせるの……」  アシェラが絶頂の余韻に震える足を叱咤して、身を起こし花芯を擦り続けるアルティメットを掴み取る。こぼした蜜で滑るそれを秘裂にあてがい、快楽に蕩け切った美貌に一瞬勝ち誇った笑みを浮かべると、そのまま一気に腰を落とした。 「あああぁぁぁーーー!!」 「ぐっ! あぁ……アシェラ……!!」  ねっとりとグラードのドラゴンに、アシェラの潤んで熱を持つ媚肉が絡みつく。引き絞るようにうねる肉襞の責め苛むような快楽に、グラードは歯を食いしばった。  たまらずグラードはドラゴンを奥まで受け入れて絶頂したアシェラの細い腰を掴み、下から突き上げる。まとわりつく媚肉を擦りたてる愉悦に、グラードの脳が悦楽に溶け始める。 「どうした、アシェラ? 腰を振れ、俺を楽しませろ」  完全に縦になった瞳孔の龍の瞳で、突き上げるたびに艶やかに痴態を晒すアシェラを視姦する。たゆたゆと揺れる胸と緩やかにゆらめく細腰。快楽に蕩けた美貌。  視界に映るアシェラの媚態に息を荒げながら、細腰を掴んで容赦なく突き上げる。最愛の女の中が与えてくる快楽に腹筋を震わせながら、久しぶりに味わう愛しい妻の身体を犯した。 「ああ、いい……アシェラ……俺の愛しい妻……」 「やぁ……グラード……いってる……いってるのぉ……」  極めた中が痙攣を繰り返す膣壁を抉りながら、夢中になって絶頂の頂から降りられないままのアシェラに穿つ。圧倒的な快楽に腰を止める術はなかった。 「あぁ……アシェラ……アシェラ……俺の妻……俺だけの女……」  今自分の上で揺れる眩暈がするほど美しい女の全てが自分のものだ。宝石の瞳も、果実の唇も、陶器の肌も、黄金の髪の毛一本すらも。  自分を覚醒させた唯一の生涯の伴侶。グラード専用に作り替えた肢体が与えてくる、至上の愉悦に慄きながらグラードも限界を迎えた。  最奥に叩きつけるようにぶちまけた灼熱に、アシェラが一際甲高く啼いて、咥え込んだドラゴンを健気に引き絞る。 「愛してる、アシェラ……」  快楽に蕩けたまま余韻に震え言葉も出ないアシェラに、脳と理性が溶け切ったグラードの胸に愛おしさが際限なく募る。美しい妻を引き寄せながら、繋がったままのドラゴンが再びアルティメットを始めた。 「俺だけのかわいいアシェラ……」  グラードは甘い囁きをこぼしながら、久しぶりに味わう愛しい妻を心ゆくまで堪能した。    ※※※※※ 「……寝なさいよ!!」  バナナには有効らしい手管はドラゴンには通用しない。デカすぎるから。  今回の敗因をそう分析したアシェラは、ドラゴン用の手管を求めて、やっと王家の閨教育を受け始めた。そこで知った事実にブチ切れ、アシェラは指南書を叩きつけた。  一晩中やり倒した挙句に、お仕置きまでこなす夫。ヘロヘロのアシェラを他所に、いそいそと執務に戻る体力の理由を知り、アシェラは怒りのあまり指南書を叩きつけた上に踏みつけた。  覚醒すると思考力、身体能力が上がる上に、睡眠の必要までなくなるとか聞いてない。 「アシェラ、悪い子だな。指南書を踏みつけたらダメだろう?」  指南書に盛大に八つ当たりしていたアシェラは、低く穏やかに響く美声に恐る恐る振り返った。 「グラード……私はちゃんと妃教育を……だからお仕置きは……」  そろそろと後ずさるアシェラの腰を捕まえて、グラードは金色の瞳を優しく和ませた。 「そうだな。勉強してえらいぞ。いいこだな、アシェラ」  ホッと表情を緩ませたアシェラに、グラードの胸に愛おしさが込み上げる。捕まえた腰を引き寄せて、滑らかな白い頬を指先でなぞった。 「でもな、アシェラ。俺たちは夫婦だ」  警戒を滲ませながらアシェラは慎重に頷いた。グラードはアシェラを見つめたまま、金色の瞳をとろりと蕩けさせる。 「だからな、別にお仕置きじゃなくてもいつでも愛し合っていいんだ。お前がいい子でも悪い子でも……」  瞳を見開いたアシェラに、グラードは喉奥でくつくつと笑った。悪さの頻度が高くてお仕置きばかりされているアシェラは、そのせいで悪さしなければ大丈夫だと思い込んでいる。  いい子でも悪い子でも、やられるのに。夫婦だから。  衝撃の事実にフリーズしたアシェラに、グラードはそっと顔を近づけた。そして美しい妻の美貌に誓った。寝てても起こそう、と。  自分が迎えた美しい伴侶は、余計な体力を残したらダメな女だ。ろくなことしない。  毎日毎晩、隅々まで丁寧に可愛がってやらなければならない、とても手間のかかる女。 「愛してるよ、俺のかわいいアシェラ。俺が生涯大切にかわいがってやるからな……」  熟れた果実の甘い唇に唇を重ねながら、グラードは唯一無二の手のかかる愛しい宝物を抱き寄せた。
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