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ユキノさんがレナさんを外へ連れ出したため、わたしも掃除はそこそこに、二人を追って部屋を出た。見失ったかと思ったが、ビルの向かいにある公園のベンチに、二人が並んで座っているのを見つけた。
レナさんはうつむいたまま時々肩を揺らしている。わたしは公園のゴミを拾いながら聞き耳を立てていた。若干の罪悪感を感じるが、これは仕事なのだろうか。自問自答していると、ユキノさんが口を開いた。
「レナ、泣いてたってわからないでしょ。何とか言いなよ」
「……ごめんなさい」
なんとか絞り出すように、レナさんがつぶやいた。
「何で謝るの」
「わたし、ユキノのこと勘違いしてた。わたしのことが嫌いで、きついことばかり言うんだって。だから、ユキノのことを全部忘れてしまおうとしてた」
「当たりが強かったのは間違いないもんね。でも、わたしはレナが……」
「わかってる。心配してくれてたんでしょ。わたしが人とうまく話したりできないから」
「……あんたは、もっと自分をさらけ出すべきなんだよ。なんでもひとりで抱え込み過ぎ。なんか、見てたらもどかしくなって、ついイライラしちゃうんだよね。……嫌な思いさせたよね。ごめん」
「ううん、わたしが悪いんだよ。勝手に勘違いして、勝手に忘れようとしたりして、ごめんなさい」
レナさんが頭を下げると、ユキノさんがクスクス笑いだした。
「わたしたち、もう十年の付き合いだよ。どうやって忘れるのよ。そんな簡単に忘れられたらショックなんだけど」
「……そうだね。忘れられるわけ、ないよね」
ユキノさんも顔を上げて笑った。
「お昼、行くでしょ」
「うん」
イヤリングの力で、レナさんは何を聞いたのだろうか。わたしは、二人が並んで公園を出ていくのを見送った。
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