見果てぬ夢③

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 改めて地平線を端から端までぐるりと確認する。  それを見つけた瞬間、わたしは息を呑んだ。真っ暗な空の中に、青い星が浮かんでいる。あまりにも現実離れした光景に、言葉を失ってしまう。 「……月は、私の夢だったのです」  山野さんは青い地球を見ながら、目を潤ませているようだった。 「子供の頃、父親に買ってもらった望遠鏡で、毎日月を見ていました。いつかあそこに行くのだと、根拠のない自信を持ってね」  彼は少し恥ずかしそうに笑った。 「宇宙飛行士になろうと必死に勉強しました。ところが、選抜試験に受かった矢先に、事故に遭ってしまいましてね。神は居ないのだと、その時は思いました」  わたしは彼の足に目をやった。彼が事故に遭った直後に治癒の魔法を使えたら、彼の運命も変わったのかも知れない。 「それが、こうしてこの星に立って、この光景を見ることが出来るとは」  そう言って、山野さんはしゃがみ込んだ。わたしが手を貸そうとするのを遮って、彼は地面に手を付けた。 「地球から見た月はとても神秘的で、私の知らない鉱物や、宝物が沢山眠っているに違いないと期待していたものですが」 「……違いましたか?」  わたしが聞くと、彼は微笑んで首を横に振った。 「もちろん、気持ちは変わりません。ただ、ここに立って改めて思ったのです。……やはり、私たちの地球こそ美しいと」 「……そうですね」  わたしたちはしばらくの間、青い地球を眺めていた。
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