見果てぬ夢③

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 わたし達が体験したのは、本物の月面旅行だったのか。店に戻ってから、わたしはミコトさんに聞いた。 「どう感じられましたか?」 「わたし、動画で見たことあるけど、雰囲気はそっくりだったよ」  ハルカちゃんが答える。 「というか、どうして森が月に繋がっているんです?」 「簡単ですよ。貴方がたは初めから月にいらっしゃったからです」  わたしは一瞬、思考が停止した。 「いやいやいや、月ならここから見えてますよね」  窓の外の夜空に燦然と輝く満月。そこで、わたしはある引っかかりを感じた。 「……そう言えばあの月、いつも満月ですよね」 「あれは、月ではありません」 「じゃあ、なんだと……」  わたしが聞こうとすると、ミコトさんは唇に人差し指を当てた。 「月面旅行体験規則の最後の項、お忘れなきよう」  規則の最後の項、そこにはこうある。   一、本体験で知り得た事実は口外してはならない  まさか、このお店があるのは、月の上なんだろうか。わたしが顔をうかがうと、ミコトさんはいつものように優雅に微笑んでいた。
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