記憶の残り香①

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 そんな話をしていると、今度は入り口の鈴が鳴った。入ってきたのは、ミコトさんではなく、若い男の人だった。 「あのう、こちらは魔法店でよろしいんですよね」  彼は少し気後れした様子で店の中を見渡した。 「ええ、どうぞ。店主が出かけているので、お座りになってお待ち下さい」  わたしが応接用の椅子に案内している間に、マナがお茶の用意を始め、ハルカちゃんがテーブルを布巾で拭く。狭い店内に三人の従業員は多すぎる気もするが、家族経営みたいで少し嬉しくなる。 「あ、それは」  彼は、ハルカちゃんがテーブルから片付けようとした例のお面を見て、声を上げた。 「このお面が何か?」 「お願いしていた物、見つかったんですね! 良かった」 「お客様の物ですか?」  彼にお面を渡すと、ホッとした様子で胸を撫で下ろしている。 「父の形見なんですよ」  こんな不気味なお面が形見なんて、どんなお父さんなのだろう。 「父はいわゆる、UMA(ユーマ)を探す冒険家なんです」 「ゆーま? 未確認生物のこと?」  流石、博識のハルカちゃん。興味があるらしく、目を輝かせている。
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