記憶の残り香①

3/4
前へ
/186ページ
次へ
 石橋コウジと名乗った彼は、お面にまつわる伝承を聞かせてくれた。  『使者のお面』を身につけ、夜空に向かって『約束の鐘』を鳴らすと、それを合図に『アカガイ』が現れるという。  オカルト的な伝承のようだが、彼のお父さんは、そんなものを本当に信じていたのだろうか。 「仰りたいことはわかります。でも、父は本気だったんですよ」  お面を見つめて彼は言った。 「『アカガイ』って?」 「僕も結構調べたんですが、詳しいことはわからないんです。伝承自体の出どころも不明で。動物かも知れないし、もしかしたら宇宙人なのかも」  いよいよ怪しい話になってきた。 「子供の頃、『アカガイ』を見るために、父と何度も出かけました。このお面は思い出深い品なんです」
/186ページ

最初のコメントを投稿しよう!

93人が本棚に入れています
本棚に追加