記憶の残り香②

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 『カグヤ』をローマ字にして、最後の『A』を前に持ってくると、『AKAGUY』になるというわけだ。 「お母さんとは会われているんですか?」 「ええ、もう歳ですから、一緒に住むことも考えていて。親父が嫌がりますかね」 「きっと大丈夫ですよ。わざわざ奥さんの名前を伝承に使うなんて、気にかけていたって事じゃないですか」 「……もしかしたら、母に戻って来て欲しかったんですかね」 「そうかも知れませんね」  夜空を見上げると、少し欠けた月が出ている。あれは紛れもなく、大昔から人々を見つめてきた本物の月だ。月に聞いたら、答えがわかるのだろうか。
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