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土曜日、わたしたち四人は、ミコトさんの魔法で交流会の会場へやってきた。
「ここ……ですか?」
そこは、有名な高級ホテルだった。ロビーの案内に、魔導師協会交流会と書かれているので間違いはないのだろう。しかし、堂々と魔導師協会などと書いて、怪しまれないのだろうか。
「三階の鶯の間ですね。先に受付を済ませていて下さい。『関東第一支店』で伝わりますので」
ミコトさんが何処かへ行ってしまったので、三人でエスカレーターに向かう。
会場前に設けられた受付で、ミコトさんに言われた通りに告げると、中に案内された。
「うわぁ」
マナが声を上げる。結婚式の披露宴でも使いそうなパーティ会場には、二百人以上の人が席に着いていた。
「これ全部、魔法店の関係者?」
「交流会なんだから、そうなんでしょ」
案内されたのは、部屋の一番端の席だった。テーブルの上に『関東第一支店』の札が置いてある。大きめのテーブルなので、三人で座ると間隔が空いてしまってなんとなく心細い。他のテーブルを見ると、どこも八人前後はいるようだ。
「うちの支店って小さい方なのかな」
「どうだろう。お店の規模からしたら、大きくはないよね」
そもそも、わたしたちがミコトさんのお店で働くようになるまで、従業員はいなかったのだ。
「皆さん、ようこそお集まり頂きました。これより交流会を始めます」
タキシードを着た男の人が、よく通る声でマイクに向かって司会を始めた。
「まずは、会長より、ご挨拶を賜ります」
盛大な拍手に迎えられて壇上に上がったのは、他ならぬミコトさんだった。
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