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 俺が選んだの名前は「咲」。高校に入学して数ヶ月の、元気な子だった。どう呼ばれたいかを聞かれて気恥しさを感じながら「お兄ちゃん」と答えると、咲は会話の節々で俺をそう呼んでくれるようになった。  話し上手の彼女は新しい環境でも直ぐに友達が出来ただろうと思った。が、意外とそうでもないと咲は肩を落とした。聞くと、初対面であれば会話を盛り上がらせられるが、毎日顔を合わせる同級生となれば段々と会話に困って、気づけばどのグループにもいない状態になってしまったらしい。  対する俺はそもそもの会話が苦手なので、初対面ならという咲を少し羨ましく思った。  俺が一晩で考えた今日のプランは、色んな店が並ぶ街中を散策して二時間を過ごすというものだ。適当すぎだと批難されかねないが、とどのつまりその方が時間に追われずゆっくり出来ると思った。だから、昼食を済ませ十四時に電車でこちらまで来てくれる咲を駅で迎え始まった時間を再ブーム中のタピオカから始め、俺たちは話しながら街中をぶらついた。
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