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「あのね、お兄ちゃんだから話すんだけど、私実は片親なんだ。」
共通点も少なからず見つかり打ち解けて来た頃、時間も迫っているのでそれとなく駅に向かって歩いている時、咲は突然真面目な顔つきになって言った。話題としては少々重めの話かもしれないが、家庭の事情まで話してくれたと嬉しく感じていた。話口調からして咲は少々片親だということを気にしているかのようだ。ここは咲に一つ言ってやらねばならないと思った俺は、
「俺もだよ。」
と笑った。同情を示すという意味で答えたそれに咲は驚いた表情を見せた。これで少しは安心してくれただろうか。
すると咲は更に気を許したように、同じ境遇にいる俺に家庭の事を話し始めた。咲は俺とは違って母子家庭で、お母さんとは仲がいいと言う。レンタル兄妹なんてある意味危険なバイト、必ず反対されるだろうからこの仕事をしていることだけが唯一の秘密なんだと声を小さくして言った。
何故そこまでしてこのバイトをしているのかと聞くと、それもまた理由があると言う。その理由とは、幼い頃に両親が離婚したのだが、その関係で生き別れた兄妹を見つけることだった。両親の離婚時とても小さかった咲は兄妹の記憶も父親の記憶も殆どないが、母親から咲には兄妹がいるのよと何度か聞いたことがあるらしかった。
そんな中、俺は真剣な咲の話を聞きながら、どこかで聞いたことがある気がしてならなかった。
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