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×月×日
一歳になっても三葉の左手は握られたままだった。
姉ちゃんも義兄さんも時間があると、穏やかな口調で三葉の手を開こうと試みているが、楽しい遊びの延長線上で、けっして無理強いはしていない。
でも他の二人より接する時間が若干長いので、母ちゃんは一葉や二葉が妬かないか心配していた。
だが、それは杞憂だと思う。
母ちゃんに伝えてあげられないのはもどかしいが、一葉や二葉も四葉の存在が見えているように思えるからだ。
まだ幼くて、それが事実かどうかはっきり訊くことはできない。でも、彼女たち三人とも四葉と意思疎通し、遊んでいるように僕には見えた。
音の出る絵本で喜んでいる時、積み木を積んで楽しんでいる時、三葉と手をつないだ四葉が必ずそばにいる。
三人は姿形の違う四葉を奇異に思うこともなく、傍目から見ても仲の良い四つ子の姉妹だった。
もちろん、それは僕だけが見られる光景だ。
四葉はほぼ無表情だが、それでも三人が笑い声を上げると同じように笑っているように見えた。
そんな四葉に嬉しく思う反面、疑問もある。
彼女は自分自身をどう捉えているのだろう。
三人と同じ姿形をしていると思っているのだろうか?
命と肉体を持つ者だと思っているのだろうか? と。
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