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三歳になると三つ子ちゃんたちのやんちゃぶりにも拍車がかかって来た。
僕は大学に進学せず、親父の工務店を継ぐべく修行を始めていた。
姉ちゃんは事務とまかないを母ちゃんと一緒に担い、義兄さんは三つ子ちゃんが生まれた頃は普通の会社員だったが、不況のあおりでリストラされ、今は僕と一緒に親父の元で修業をしている。
跡取りは正真正銘僕だが、姉ちゃんは義兄さんに跡を継がせようと考えているらしい。
「あんたは家に捉われなくていいの。自分の好きなことやりなさい」
常にそう応援してくれるけど、僕は知っている。
姉ちゃんが義兄さんに「早く仕事覚えてお父さんに認められろ」とせっついているのを。
今のところ、僕には目指しているものがないので、大工でも工務店の経営だけでもやるのはどっちでもいいし、社長になった義兄さんに使ってもらうってのもありかなと思ってる。
逆に心配なのは義兄さんのほうだ。もともと一般的な会社員だったってことは、ものづくりのような業種は苦手なんじゃなかろうかと。
もし子供の頃からそういうのが好きだったのなら、もとからそんな仕事に就いていたんじゃないかと思う。
趣味でDIYどころかプラモデルを作ってるのすら見たことないし。
案の定、ノコギリを使うのでさえ、姉ちゃんのほうが巧いくらいだ。
こりゃ、子育てが一段落した後、姉ちゃんが棟梁になって、義兄さんが経営担当になるって場合が出てくるかもしれない。
ま、いずれにしても、僕はそこそこのお給料で雇ってくれれば、どの立場でもいいや。
だって、姉ちゃんに逆らうのは怖いもん。
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