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俺には妹がいた。
何時からか、家族の誰もが
妹のことを無視するようになった。
悪い冗談だと思った。
風呂も、食事も、学校にだって行ってない。
それでも、その存在を全く無かったことにされた。
そんな妹は居ないんだ、
そう言い聞かせられた時期もあった。
だが、実際にココに居る。
学生時代辛かった時も、
社会人になってへとへとに疲れたときも、
妹と一緒に過ごしてきた。
幽霊なんてものが存在するのなら、
一緒に年をとっていく妹は、
やっぱり幽霊ではないのだろう。
ふと妹の名を呼ぶ。
「沙由紀」
すると、急に世界が廻りだした。
酔っぱらって酩酊したように、
辺りの景色はフラフラと波打っている。
歪んだ世界で見えた妹の姿。
妹の顔まで醜く歪んで見える。
妹の声は妙に甲高く景色になじんでいく。
「サユキって、だぁぁぁぁれぇぇぇぇえ?」
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