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「一位は、楠本。」
現代文の教師が放った波動は、「おお……」という今ひとつの攻撃力でクラスを揺らした。
(ああ、やらかした)
恥ずかしさで私はうつむく。
「さすが」
「すごい楠本さん」
横から背後からそんな声が聞こえてくるが、うつむいて丸まったので、それをまっすぐに受け取ることはできない。ことにする。
皆どう思ってるのだろう。
本当のところは。
(さすがボカロオタク)
(オタクつよ)
ボカロ好きだなんて友だちにしか言っていないのに、どうしてもそんな架空の悪口が浮かんでしまう。中学時代のいじめられっ子のせいだ。
その子は塾に行ってないのに勉強ができる、ただそれだけで仲間に弾かれてしまった。
あれは悲惨だった。空気以下にされた人間を、初めて見た。ああいう景色は見たくない。
だから、一位にはなりたくなかったのに。なったとしても、知られたくなかったのに。
前回の一学期中間テストの時は、一位は人気者の佐藤くんだった。彼なら許されることが、私では許されないことがある。はっきりとした根拠はないが、あることだけは言えるのである。
(こわい)
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