林さんと同居

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翌朝二人で朝食を食べた。 「今日は帰りが遅いから食事はいらないです。先に休んでていいからね」 そう言うとスーツに身を固めたザ・リーマン姿で林さんは出社していった。 学校が終わって買い物をして帰ってきたら家の中は暗かった。遅くなるって言ってたから飲みにでも行くんだろうと優菜は自分の夕飯を作りながら思っていた。 部屋に一人きりでアルバイトもなければ、時間を持て余してしまう。ネットで調理器具の動画を見たり取説を読んだりしながらソファーでダラダラ過ごしていた。こんなにぐーたらしていていいのだろうか? 1人分の食事を作る事など簡単で、わざわざ手の込んだものを作り食べようとは思はなかった。やはり料理は誰かのために作るから楽しいのかもしれない、とビーフストロガノフのレシピを見ながら考えていた。 23時くらいに玄関のドアが開く音がした。林さんが帰ってきたみたいだ嬉しくなって自分の部屋から出て「お帰りなさい」といってみた。 「ただいま」 笑顔でそう言うとコンビニの袋を背中の方へ隠した。 「あの、コンビニのお弁当ですね……」 林さんは食いっぱぐれてしまったから今日はこれ。といって袋をかざした。 遅くから食事を作らせるのが悪いと思ったのか、私の料理が口に合わなかったか。不味いとは言えない人だろう。そこは突っ込んではいけないし、おせっかいもきっと良くないだろう。 「私はもうやすみますね。お仕事お疲れ様です」 笑顔でそう言うと「おやすみと」言ってくれた。 ドアを閉めたあと、お味噌汁くらい作ろうかな……と思い直してリビングへ向かった。 林さんはテレビを観ながらコンビニ弁当を開けていた。 優菜は冷凍庫から味噌玉を出した。 「これ見てください。味噌玉です」 林さんは、ん、なに?といった表情で2㎝ほどの味噌の丸い塊を不思議そうに見ていた。 「これは味噌玉です。粉末の出汁と、乾燥ワカメとかゴマとか油揚げ。みそ汁の具材になるものを丸めて冷凍したものです」 いわゆる即席みそ汁だ。味噌は冷凍しても固まらないので半永久的に保存がきく。電気ポットでお湯を沸かして林さんに味噌汁を出した。 「すごい。これ美味いな」 林さんは驚いた顔で私を見る。 「お味噌汁って沸騰したら美味しくなくなるんですけど、これなら沸騰気にせずに簡単にお味噌汁が作れます。そして意外と美味しい」 うんうんと頷きながら林さんは訊いていた。 「たくさん作ったので冷凍庫に入れておきました。良かったらいつでも飲んで下さいね」 そう言うと、うわ有り難いねといって喜んでくれた。 林さんはお味噌汁が好きなのだと優菜は思っていた。だから今日たくさん味噌玉を作ったのだった。 それから少し優菜の学校であったことなどを話していると、気がついたら12時過ぎてしまっっていた。 つい話が弾んで、というより、林さんが聞いてくれるのが嬉しくて、遅くまでつき合わせてしまった。 おやすみなさいをしてから優菜は、急いで部屋へ戻ったのだった。
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