プロローグ

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プロローグ

「いや、そういうつもりじゃないから」 カットソーを脱いで下着姿になった彼女は恥ずかしそうに胸元まで赤く染めながら僕と向き合っている。 「でも、何も返すものがないので……」 申し訳なさそうに、伏し目がちにそういう声は震えているようだ。 「別にお返しとか望んでいるわけじゃないから」 とにかく大丈夫だと説得にかかる。 「……その、私とじゃ、嫌でしょうか?」 子犬のように潤んだ瞳が僕を見上げる。 「まさか……それはないよ」 急いで否定する。 物凄く可愛らしい。アイドルをやっていてもおかしくない。まるでお人形さんのような顔は写真一枚いくらかで売れそうなほど美しかった。 「じゃあ、どうぞお願いします」 彼女はズズズと膝をすすめて僕の傍へ近寄ってくる。 「えっと、二十歳超えてるよね……」 彼女はコクリと頷く。 これは御褒美と言えばそうなんだけど、いや、若いだろ……若すぎる。 まずいよな。林は自問自答する。 彼女の女性らしい肩を両手で押さえて、これ以上近づけないようにガードする。 「林さんお願いですから、私を抱いてください……」 やはりキャバ嬢やってるからこういう枕営業みたいなのは慣れているんだろう。 遠慮することはない。そう自分に言いきかせる。 「わかった。じゃあ、するけど、その……後から訴えたりしないでね」 ウンウンウンと何度も首を縦に振り、白い腕を僕の首に回してきた。 「お金でするとかじゃないから、それだと買春だから犯罪ね。わかる?」 じれったい態度に痺れをきらしたのか、彼女は抱きついてきた。 抱きついた彼女の腕を押しのける勇気は僕にはなかった。
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