新たな生活

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世の中は丁寧な暮らしブームで、自然と共生する日本古来の生活に人気が集まっていた。 ご近所さんからいただいた畑で採れた新鮮な野菜、自分で作った手作りのジャムや漬物。海が近かったので新鮮な市場で買った魚。そんな食材を素材の味を活かして調理した。塩を振って焼いただけみたいな料理が意外と人気だった。 こんなおんぼろの家が古民家と言われて、エアコンのない扇風機の夏は「ノスタルジック」 土鍋で炊いたご飯や、出汁を煮干しで取った味噌汁、一汁三菜の料理は「健康的、手間のかかった丁寧な料理」 余裕のある生活しかしていない人の感覚は不思議だなと思った。 朝打ち水をし、植物に水をやり、田んぼ道を散歩して、22時には就寝する。 こんな、なにもない生活が、スローライフといわれ、お洒落で穏やかで素敵に感じるらしい。 エコというよりセコいそんなものがなぜ羨ましがられるのか、優菜は理解できなかった。 質の良いものをきちんと使いつつ、粗末に見えるようにする千利休の「わび茶」スタイルだそうだ。 たまたま流行にのった感じで幸運だったと思う。そして家にいながらの現金収入はありがたい。
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