司法書士の林さん

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彼女は母子家庭で2人兄妹の末っ子だった。林の母の友人の女性が病気で亡くなった。確かその時、遺産相続の手続きを手伝ったんだ。 母はその女性を妹のように可愛がっていたらしく、亡くなったと知らせを聞いた時、何かできることがあるのなら手伝ってあげてくれと僕に頼み込んだ。 確か名前は前迫優菜(まえさこ ゆうな)さんだったかな。 彼女の母親が亡くなった時、親戚もなく兄妹2人が残された。兄はもう成人して働いていた。妹の方はまだ学生だった、看護学校かなんかの1年生だったが、看護師として卒業後に一定の期間、指定された病院で勤務すると奨学金の返済が免除になるという制度を使って、学校へ通っていたはずだ。 生活は残された遺産とアルバイトで何とかやって行けるだろうという事だった。 「その後どうしてたのかな?元気だった?」 あの時から数えると、まだ学生なはずだが。 「はい。今看護学校の3年です。あと半年で卒業する予定です」 なぜか彼女は恥ずかしそうにそう言いながら、他のお姉さんたちを横目でちらちらと確認していた。 「そおか、じゃあここでアルバイトして頑張ってるんだね」 「はい。他のアルバイトも掛け持ちしてますが、ここの時給がいいので週2日ほど来させてもらってます」 初々しい話し方が他の客の視線を集めた。 なんか僕が生娘を狙ったおっさんみたいになっているようで気まずい。 周りは無視して話をする。僕が知り合いのせいか、彼女は他のキャバ譲に比べてあまりスキンシップが激しくなかった。 普通だったら女の子たちは男性のどこかしらに手を置いたり、腕を組んできてわざと胸を押し付けてきたり、何とか客にボディータッチしようとする。 そういう事に慣れていないのか、彼女はあまり身体をくっつけてはこなかった。 「早速マコちゃんお客さん捕まえちゃった。ホント上手ね」 嫌味なのか何なのか先輩らしい女の子が話に割って入ってきた。 そんなことはという感じで首を横に振っているが、先輩女性は何か言いたげにプイと横を向いてしまった。気に食わない事があったのか、先輩らしい女の子はお世辞にも接客業に向いているとは思えなかった。 けれど久しぶりに見た前迫さんが、元気にやっているようなので、まぁアルバイトの仕事内容はどうかとは思うが取りあえず良かったなと林は思っていた。
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