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「思うこと、感じることが、違うのは、いいの。私が、ツラいのは、私は、私、あなたは、あなたって、線を、引か、れる、こと、なの」
抑えようとしても抑えきれない嗚咽の中、真由美は僕に気持ちを伝えようとしていた。
僕はどうだ。それを聞いても何も言えなかった。
(そんなことない。僕はいつでも真由美とひとつになりたいと思っている。君の考えること感じることをもっと知りたいと思っている。)
頭の中ではそんな言葉が流れるように浮かんでいた。
それでも、それを口にすることができない。
言わなければ気持ちが伝わるわけもない。そんなことはわかっている。
それでも僕は何も言えなかった。
と、そんなときに、僕らのかたわらに一人のおじいさんが立っていることに気がついた。
おじいさんはニヤニヤと笑いながら僕たちを見つめていた。
ちょっと、見世物じゃないんだからあっち行ってくれないかな、と思った瞬間、おじいさんが僕たちに話しかけてきた。
「チューをせんのかい?」
-中央線の怪・完-
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