姉妹に飢えた者たち

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 そんな時間は当然長くは続かない。 『アオイちゃん、そろそろ帰ろっか』  星が輝き始めた頃、姉から山岡くんに戻ってしまった。 「帰りたくない」 「ほな、もうちょいゆっくりする?」 「ううん、今日は寮に帰らない。……部屋でメンバー入りした後輩の顔なんか絶対見たくないし」  困らせるだけだと分かっていても、つい甘えが出てしまう。 「ねぇ、今日だけ、今日だけだから側にいてよお姉ちゃん」  縋るような目で見上げた先に、戸惑う様子の彼が映る。 本物の妹ならもっと上手な甘え方が出来ただろう。私はただ駄々をこねるだけで、甘えと迷惑の線引きがわからなかった。 「それはあかんよ。アオイちゃん」  ポンポンと頭に手を置いて、幼児をなだめるようなゆっくりした口調で『寮には帰らなあかんで』と諭す彼。 「悔しい気持ちも、どうにもならん感情も、今すぐ消す事は出来へん。今日寮に帰らんかったとしても、次の日には帰らなあかんやろ? 一度逃げたらずっと逃げたくなってしまう。そやから、苦しくても寮には帰らなあかんねん」  正論の中に寄り添う優しさが溢れている。素の状態の山岡くんは兄貴力が非常に高い。 「嫌でも帰らなあかんのかぁ……」 「そうや。色々思う事あるやろうけど、そこはきっちり頑張り。それとな、アオイちゃん」  言葉を区切り、真っ直ぐな目を向けて 『男は飢えた獣やから、気ぃ許し過ぎたら危ないで』 と、忠告してきた。
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