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澪さんはずっと新條清のことが好きだった。
振り向いてもらいたくて、いけないとわかりつつも、新條清と関係を結ぶようになったそうだ。
都合が良くてもいいと思っていたけれど、次第に新條清も澪さんへの想いを打ち明けてくれるようになり、二人は両思いになった。
————けれど、それはそういうフリをしていただけだったのだそう。
『キヨはね、あたしのこと遊びにくらいにしか思ってなかったんだよ』
『……好きだって言われたんじゃないの?』
『本心じゃなくても言えるでしょ』
新條清とのことを話してくれた澪さんは偽物でも、嬉しかったけれどやっぱり虚しいものだと悲しげに笑っていた。
『両親に関係がバレたときも、キヨはあっさりとあたしを捨てた。妹だと思ったことは一度もないって言われたんだ』
そんな初恋の苦い終わりだと言っていた澪さんは、窓越しに月を見つめながら静かに泣いていた。
『死にたいって思った。誰にも愛されてこなかったから、偽りだったとしてもあたしはキヨからの愛情が嬉しかったんだ。でも大事にすら思ってもらえてなくて、切り捨てられたとき、あたしってなんだったんだろうなって……』
私はただ隣で澪さんの肩に寄り添って、静かに話を聞いていることしかできなかった。
澪さんを捨てた新條清を私はずっと許せなかった。
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