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「赤地くんこそ」
休日の昼間から赤地くんと会うことなんて滅多になかったので、なんだか妙な感じだ。関係を持っているときも会うのはいつも夕方や夜からだった。
「俺は……なんとなく会えるかなって思って。前にこの店好きって言ってたし」
「よく覚えてたね」
「……忘れるわけねーだろ」
まだ諦めていなかったらしく、面と向かって言われるとなんとも言えない気持ちになる。
どうして私にここまでこだわってくれているのか理解し難い。
同じだけの思いに私は応えられないということを、彼は知っているはずだ。
それじゃあと言って歩き出す私の横を赤地くんが歩く。やめてと言ったところで、彼はついてくるだろう。
「なあ、彼氏とうまくいってんの?」
「関係ないじゃん」
「……そうだけど、気になるし」
一応彼氏だけど、一般的な愛を語らうような甘い関係ではない。
だけどそんなことを赤地くんが知ってしまえば、また色々と言ってきそうだから知られたくない。
「彼氏、どんなやつ」
赤地くんの知っている人だよなんて言えなかった。
元担任だし、面倒なことにはなるべくなりたくない。
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