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「優しいよ。あとちょっと不器用なところもあるけど」 「……へえ」 私は今残酷なことをしているのかもしれない。振った人の前で、彼氏の話をするなんて傷を抉っているようなものだ。 「同級生?」 「大人。ってか、そんなこと聞いてどうするの」 うっかり答えてしまったけれど、これ以上はあまり伝えない方がいい。ボロが出そうで怖い。 「大人かよ……なんかそれだけで負けたって感じだな」 「私が離れたから急に欲しくなっただけでしょ」 赤地くんが私に対してずっと特別な思いを抱いてくれていたのは知っている。けれど、ここまで執着するのはおそらく離れていくことを実感して焦っているからだ。 「その人と付き合っていなくても赤地くんと付き合うことはないと思う」 「……わかってるし」 変に期待を持たせたくないので、はっきりと伝えているけれど、赤地くんはめげる様子がなくて、私もどうしたらいいのかと頭を抱えたい気持ちになる。 私たちは根本的な性格がまず合わない。きっと付き合ったとしても喧嘩ばかりになるはずだ。 「ただ悔しいだけ。俺には無理なことをできるやつがいるってことが」 「違うよ。ただ私たちが合わなかっただけで、赤地くんと両想いになる人はこの先いるはずだよ」 赤地くんは中学の頃から女子から人気があったし、私のことなんて好きにならなければきっと彼女だってできていると思う。 「その相手がお前じゃなかったってこと?」 「そうだね」 「なんだよそれ、最悪じゃん」 「最悪かどうかは、後になってからじゃないとわからないよ」 大人になって振り返ったら、むしろ私に想いを寄せていたことが最悪だと思う日がくるかもしれない。
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