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「助けてほしければ、助けてってちゃんと言えよ」
厳しい言葉を浴びせてくる赤地くんの方が苦しげで、私は微かに震える手を握りしめる。
「……それを言ったら、どうしてくれるの?」
「すぐに未弥と弥代のところにつれていって、俺らが話聞いてやるし、話せなければただ一緒にいてやる」
「なんでそこまでするの」
「お前のことが大事だから。本当は俺だけを頼って欲しいけど、多分それは彼氏の役割だろ」
そう言って、赤地くんが肩を竦めた。
腹が立つくらいの言葉を向けてくるのに、どこか憎めなくて、彼といると自分の嫌なところばかりが浮き彫りになる気がする。
「今は彼氏に話せねーんだろ? 事情はよくわかんねーけど。それなら友達を頼れば」
「……友達」
「彼氏になれねーなら、せめて友達でいたい」
そこまでして私に関わろうとしているこの人は、本当相変わらずしつこくて面倒で、お節介。
だけどそこが赤地くんで、きっとこの人は好かれたくて優しくしようなんて思っていない。
「だから、小夜。頼むからひとりで抱えるのやめろ」
〝小夜〟なんて滅多に呼んでこなかった。
私の苗字も途中で変わったから、赤地くんは極力呼ばなかったし、こうして下の名前を友達として呼ばれるのは、不思議な感じだ。
こんな私を救おうと手を差し伸べてくれるこの人に、頼ってしまってもいいのだろうか。
真っ直ぐ向けられた眼差しから、私を想ってくれているのを実感する。
握り締めた手のひらの力がわずかに抜けていく。
「……今だけでいいから————助けてくれる?」
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