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◇
赤地くんが連絡をしてくれて、すぐに弥代ちゃんの家に行くことになった。
中学生の頃に数えるほどだけどきたことがある弥代ちゃんの家は懐かしい。もうこっち方面へは来ることがなかったから、余計にそう感じるのかもしれない。
リビングに案内されて赤地くんと共にソファに座り、全員が揃ったところで頭を下げた。
「ごめん、弥代ちゃん……急に押し掛けちゃって」
予定があったかもしれないというのにと謝ると、弥代ちゃんは少し不服そうな表情で「そういうの今は気にしないでいいよ」と口を尖らせる。
「たまにはいいじゃん。こういう集まりも」
そう言って未弥が私と赤地くんの前にコーヒーを出してくれた。
「そーそー、未弥は彼女とデートばっかりだし?」
「そんなことないし。てか、そっちこそ真千と家デートばっかりしてんじゃん」
「っそんなことないし!」
ふたりの会話を聞いていて、私も赤地くんも身を乗り出して驚きの声を上げてしまう。
「弥代ちゃん、とうとう付き合ったの!?」
「まじかよ、弥代鈍いから当分先かと思ってた」
真千というのは、弥代ちゃんと未弥と幼馴染で、一つ年下の男の子だ。
中学の頃からよくふたりと一緒にいるところを見かけていて、周りも付き合っているんじゃないかと噂していたけれど、中学の間は付き合っている様子はなかった。
弥代ちゃんは顔を真っ赤にしながら、視線を逸らして苦笑する。
「えーっと、本当つい最近、なんだよね。小夜にも次会ったときに言おうと思ってて」
熱っぽい瞳から彼のことが好きなのだと伝わってきて、弥代ちゃんは今幸せなのだなと思うと私までうれしくなる。
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