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「てかさ、家の人に連絡しなくていいの? もう夕方だけど、まだ帰らないだろ」
未弥の一言でその場が静まりかえる。
普通だったらなんてことのない言葉だけど、私に対してだとまた少し違ってくる。私の家族はもういない。
弥代ちゃんにも赤地くんにも今誰と住んでいるのか、どこにいるのかは話していなかった。
「小夜、親戚の人と住んでるの?」
「……親戚、といえば親戚というか……」
弥代ちゃんの問いへの答えに詰まってしまう。一応親戚ではあるけれど、血は繋がっていない。
「もしかして彼氏と同棲してんのか」
鋭い赤地くんの言葉にも素直には頷けない。元々そういうつもりで一緒に住み始めたわけでもないので、なにをどう説明したらいいのやら。
「お父さんの再婚相手の兄弟の家で……お世話になってて」
未弥にもそれは話していなかったので、先生と親戚になっていたことに目を丸くされた。
「つまりその家のやつと付き合いだしたってことか」
「……赤地くんって本当すばすば言うよね」
「だって大人と付き合うとか、どう知り合うのかと思ったけど、それなら納得するし」
「大人!? 相手、年上なの?」
〝大人〟というワードに弥代ちゃんが反応を示す。
一方未弥はなにも言うまいと口を硬く閉ざしていて、それがむしろ赤地くんには怪しく見えたらしい。
「それも未弥は知ってるってことは、会ったことあるのか」
「赤地、探るのやめろって。そういうの余計に小夜に嫌われるけど」
「余計にとか言うな。嫌われてることなんて知ってるつーの」
……別に嫌いとまでは思っていないけれど、面倒なことになるかもしれないので、ここは私も口を閉ざしておく。
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