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「そんなんお前と彼氏の問題じゃねーじゃん」
そんなことで悩んでいるのかと赤地くんがため息を漏らして、踏ん反り返った。この人と私の考え方は大きく違っているなと、改めて感じる。
「赤地、こういうのはデリケートな問題だから」
「みんな自分と同じなわけじゃねーんだから、自分の考えを押し付けなければいい話だろ」
赤地くんの言う通り、考えなんてみんなそれぞれ違っている。わかっているけれど、澪さんの件はそれですんなりと丸く収まることではない気がする。
「家の顔、学校での顔、バイト先での顔、全部が同じなわけじゃねーし、全員に好かれる人も、全員に嫌われるやつもいねーだろ」
「……それはそうかもしれないけど」
「お前は自分にとっての大事な人が、彼氏にとってはそうじゃないことに拗ねてるだけだろ。押し付けてんだよ。自分が好きなんだから、そっちも大事にしろって」
先生にそんな感情を押し付けたかったわけでも、押し付けたつもりもなかった。
でも妙に腑に落ちるのは私にとって大事な澪さんが、先生の中ではそうじゃないことがもどかしくは感じていたからだ。
「その人が、お前にとってはいいやつでも別の誰かにとっては嫌なやつだったのかもしれねーじゃん。そんなの仕方ねぇよ。どうすることも他人にはできないし。相性や環境もある」
……そうだ。私にとって澪さんは救いのような人だった。
だけど、新條家にとっては父の愛人の連れ子。そしてどんな理由があれ、家の中をめちゃくちゃにした。
そのことを頭ではわかっているつもりだったけれど、本当の意味で理解していなかったのかもしれない。
「小夜はどうしたいの?」
未弥に真っ直ぐな瞳を向けられて、私は言葉に詰まる。
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