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赤地くんが玄関のドアを乱暴に開けると、そこには涼しげな顔をした先生が立っていた。
「よう」
「は……はー!? まじかよ。え、うそだろ……まじかよ……」
余程衝撃だったのか赤地くんが青ざめた顔をして、似たような言葉を繰り返している。
「うそー! ふぐっ!」
「弥代、声でかい。近所迷惑」
未弥が弥代ちゃんの口を塞いで叱った。どうやら予想外なことに相当興奮しているらしく、口を塞がれながらもなにか騒いでいる。
「赤地、また今度ちゃんと話そう」
「敗北感マジでやばいから、しばらく無理」
「……お前が言ってたのって水原のことだったのか?」
「はぁ……そうだけど」
先生と赤地くんの会話が親しげだ。そういえば先生は男子たちから人気があって友達のように接していたので、卒業しても連絡をとっていたのかもしれない。
「帰ろう」
先生が私に向けて、優しい声をかけてくる。
その瞬間、私は足が自然と動いた。
靴を履き終わると、先生が私の手を掴んで未弥たちに「ありがとな」とだけ告げて、歩き出す。
私は慌ててお礼を三人に伝えると、弥代ちゃんと未弥は笑みを浮かべて手を振ってくれた。……赤地くんは頭を抱えていた。
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