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外はいつの間にか夕暮れ時になっていて、柔らかな橙色の日差しが私たちに降り注ぐ。空が綺麗なのに、私はそれどころじゃなくて下ばかり見つめてしまう。
「せんせい」
左手は離れる気配もなくしっかりと握られていて、半歩前を歩く先生に声をかける。
「んー?」
「……いいの?」
外でこんなことをしていたら、誰に見られるかわからない。教師と、元生徒。しかも私はまだ高校生だ。
「あと少しだけ」
「……うん」
本当は私もあと少しだけでいいから、この手を離さないでいてほしかった。
迎えに来てくれた先生の優しさと、温もりに溺れてしまいそうで、苦しいのに嬉しくて、ほろ苦い気持ちになる。
「せんせい、ちょっとだけ寄り道がしたい」
お願い、これが最後のわがままだから。
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