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このままではいけない。 一緒にいたら、好きが降り積もって先生を潰してしまう。重荷になんてなりたくないし、いずれ自分の気持ちを秘めていられなくなりそうで怖い。 「なんで」 「……なんでって、そもそも私たちって両想いで付き合ってるわけじゃないし」 言い訳をさせて。 そうじゃないと私、先生に縋り付いて依存してしまう。 「俺は別れる気ない」 たった一言の拒否が、とてつもなく甘く感じて泣きそうになる。 「……引き返せなくなるよ」 私の言葉の意味を先生は理解してくれただろうか。 明確な言葉にはできなかった。 私ね、先生のこと好きになりそう。……違う。たぶんもう、好きなんだ。 だからお願い。私を突き放して。 「もう引き返せなくなってるよ」 先生の返答に心臓が大きく跳ねて、どういう意味なのかと憶測がぐるぐると頭の中で浮かんでは弾けて消えていく。 先生の腕が私の方へと伸びてきて、引き寄せるようにして抱きしめた。 「せんせい……?」 困惑しながらも少しだけ体を離すと、先生の顔が近づく。息がかかりそうなほどの距離だった。あと数センチで唇が触れてしまう。 唇に先生の指先が触れる。 「ちゃんと話そう。水原のことや、俺のこと……澪のことも」 先生の温もりに浸りながら、私は頷くことで精一杯だった。 引き返せなくなっている。 それが恋愛なのか、同情なのか、それとも別のなにかなのかはわからない。 だけど向き合って、聞かなければならない。 新條家の彼らにとって、澪さんがどういう存在だったのか。 私たちは、自分の心に大きく関わっている澪さんという存在を抜きにした関係なんて、きっと築けない。
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