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◇
先生と家に帰ると、新條清が何故か申し訳さなそうな表情で私を出迎えてくれた。
むしろ謝るべきなのは私の方で、この家でお世話になっている身だというのにあんな風に暴言を吐いてしまった。
恩知らずだと追い出されても文句は言えない。この人にとってそれほど澪さんの件は大きなことなはずで、私にとっては大事な人でもこの人たちにとっては家がめちゃくちゃになった原因を引き起こした人でもある。
澪さんに手を出した新條清にも罪はあるのだろうけれど、それは私が裁けるようなことでもないというのに偉そうな態度をとってしまった。
「生意気な口をきいてしまい、ごめんなさい」
新條清に向かって頭を下げると、慌てて止めてくる。
「頭なんて下げなくていいよ! 君にとって澪が大事な存在だと思わなくて、こっちが傷つけるようなことを言ったんだし」
「でも……」
「とりあえずさ、居間で話そうよ。今度こそ、ちゃんと」
ちゃんとと言うのは、相手の腹のさぐり合いをするような会話ではなくて、お互いの中にある澪さんとの日々について、本音で話そうということだろう。
私は小さく頷いて、家の中へ入る。
今日家を出る前とは感情に変化が起こっていて、今は穏やかな気持ちだった。
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