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『あたしさ、幸せになれたからもう心配しなくていいよってキヨに話したんだ。まあ、これは本当なんだけど、一つだけ嘘ついちゃった』
亡くなる少し前に澪さんが清さんから連絡が来たと話をしていてたとき、一つだけ清さんに嘘をついたことを話しても……許してくれるかな。
「澪が好きな人と結婚して、大事な家族ができて幸せだったのなら、本当によかった」
「……それはちょっと、違います」
私の否定の言葉に、清さんが訝しげな表情を向けてくる。正しい部分もあるけれど、違っている部分もあるのだ。
だって、澪さんは……
「私の父と、澪さんは恋愛結婚ではありません。家族になるために結婚をしました」
「え……?」
電話で澪さんは、昔と変わらない様子だった清さんに好きな人と結婚ができて今は幸せだと話したらしい。
好きな人というのは合ってはいるけれど、少し意味が違っている。
お父さんと澪さんは、恋愛関係ではないのだ。
ただ、それぞれが家族を欲していて、補い合うように私たちはあの形を選択した。澪さんは昔から家族の愛に飢えていて、それは私とも似ていた。
お父さんは澪さんを養女にすることも考えたそうだけど、ふたりで話し合って結婚という形を選んだそうだ。
結婚する直前に私にも意見を聞いてくれたけれど、澪さんが家族になるのなら私は嬉しかったし、反対する理由もなかった。
「それってつまり、水原の親父さんと澪は……本当の意味での夫婦ってわけじゃなかったってことか?」
「どちらかというと私と姉妹って感じでした。父もそんな風に接していましたし」
「……なんでそこまで」
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