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清さんを見送り、朝食準備を終えると先生が起きてきた。 今日は日曜日で完全にオフのため、先生はどこか緩い。まだ目が眠たげで、とろんとしている。 そんな姿さえも可愛いと思ってしまう私は重症かもしれない。 朝食の片付けは先生が手伝ってくれて、先生とふたりで居間に座って向かい合う。和やかな休日の雰囲気に飲まれそうになるけれど、私は気を引き締める。 「ねえ、私にくれた鍵って澪さんが使っていたやつでしょ」 先生が最初にくれたこの家の鍵は、澪さんが好きな青色の鈴がついていた。 「……そうだよ」 「ずっと大事に残していたんだね」 先生にとってももしかしたら、澪さんは大事な姉であることには変わりないのかもしれない。 「簡単に捨てられるほど、どうでもいい存在じゃなかったんだよ。俺にとっても」 「……そっか」 「俺からしてみたら、清も澪も大事な家族だったから」 そんなふたりの関係を知って、先生も衝撃を受けたそうだ。 兄と姉と思っていたのに、実はふたりが内緒で付き合っていたこと。 家族だったからこそ、先生にとっては受け入れがたかったのだろう。 「俺らに澪の話を教えてくれてありがとな」 もう取り返しはつかないけれど、それでも澪さんのことを知れてよかったと先生は言う。 あのままだったら、清さん自身もずっと澪さんの想いを知らないまま生きていくことになったから、聞けたことはとても意味のあることだったと。 「今になって俺も、もっと澪の気持ちとか考えるべきだったって思う。キヨとの関係には正直戸惑ったけど……でも、母さんがあんな風に追い出すのを止められなかったから」 それほど新條家にとって親の存在というのは大きかったそうだ。 今は父も母も他界したため、清さんは好きな仕事をできているらしい。おそらく長いことこの家の子どもたちは親に振り回されてきたのかもしれない。
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