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「せんせいにとって、澪さんってどんな人だった」 「わがままで怒りっぽくて、面倒なやつ」 愛情がこもっている口調で話されて、思わず笑ってしまう。 もっと早く聞いて、私も話してみたらよかった。 「だけど……ちゃんと話をするべきだった」 「……後悔、してる?」 「後悔なんて数え切れないほどした。合わないところはあっても、俺にとってもはたった一人の姉だったから」 「……そっか」 私はずっと勝手に新條家の人たちを恨んでいた。 澪さんを傷つけた人たちだと怒って、先生に特別な想いを抱くことも澪さんを裏切ってしまうような気がして、いけないことのように思ってしまっていた。 ……澪さんはいつだって、誰かを恨んでいるようなことは言っていなかったのに。 清さんも、先生も、それぞれが後悔を抱えて葛藤をしている。 「でも過去に囚われてばっかじゃダメだよな」 それは私にも向けられた言葉な気がした。 澪さんとお父さんのことを過去にするのが怖かった。でももう時間はゆっくりとだけれど流れ始めていて、環境も変わった。 「小夜」 名前を呼ばれて、顔を上げる。下の名前を呼ばれたのは初めてな気がした。 「もう俺も自分に都合のいい言い訳を並べるのはやめる」 言い訳を並べていたのは私も同じ。本気で好きになってはいけないと自分の中に芽生えた想いを拒んで、見ないフリをしていた。
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