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目の前に座っていた先生が立ち上がり、私の隣に座った。そして真剣な眼差しで顔を覗き込んでくる。 「俺に縋って」 ぴくりと動かした右手を先生の大きな手に重ねられて、捕らえられてしまう。 「……そんな告白はじめてされた」 言葉の真意を探るように返してみるけれど、〝告白〟という言葉を否定されない。 「後悔しない?」 「先のことはわからないけど、今はまったくしてないな」 「なにそれ」 先生らしい返しに、クスクスと笑ってしまう。 私は先生のことを本気で好きになってしまうのが怖かった。お互い本気で好きになられても、同じだけの想いを返せないと言っていたから。だけど……期待してもいいのだろうか。 「ねえ、せんせい。好きになってもいい?」 おずおずと顔色をうかがいながらも聞いてみると、先生が口元を僅かに緩めた。 「俺もそんな告白はじめてされた」 からかわれた気がして、先生に掴まれた手を引き抜こうとすると、強く握られて逃れられなくなってしまう。 そんな私に「聞いて」と先生が言葉をかけてくる。 「俺は教師で、小夜はまだ高校生で、まだ数年の間は障害が多いと思う」 「……うん。私も先生が教師を辞めないといけないようなことにはなってほしくない」 だからこそ、私たちは付き合えても堂々と出かけたりするのはしばらくできない。それに未弥たちには既にバレてしまっているけれど、他の人たちにはバレないように気をつけないといけない。 「我慢させることもあると思うけど、それでも離れるのは無理」 夢を見ているのかと思うほど、今日の先生の言葉には甘さが含まれていて、頬の熱が上がっていく。
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