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◇◆◇ ねえ、小夜。 あたしね、あたたかい家族が欲しかったんだ。 新條の家はそれとはかけ離れていて、義母はあたしを憎んでいたし、父はあたしを疎ましく思っていた。 清は兄というよりも片想いの相手で、涼はあたしのことを姉のように慕ってくれていたけれど、あたしと清の関係を知って拒絶されてしまった。 だからずっと、家族が欲しくてたまらなかったの。 あたしにとっての恋は清に対してだけしか芽生えなかったけれど、でも静也さんと小夜が家族の愛を教えてくれた。 家を出て、真っ暗闇を歩いているようで希望なんてなかった日々。 生きることすら面倒になっていたあたしは、お月様みたいに優しくて穏やかな静也さんと出会って、救われた。そして、静也さんは星のように控えめで少し寂しげな小夜と出会わせてくれた。 ふたりが私に、優しくて穏やかな日々をくれたんだよ。 暗くても怖くない。ふたりがあたしを照らして守ってくれたんだ。 好きだよ。 大好き。 ずっと、ずっとこの気持ちは褪せていくことはない。 もっと一緒にいたかったな。 小夜が大人になるのを静也さんと見たかった。 小夜はどんな人と結婚するのかな。旦那さんは静也さんみたいな人だったらいいな。だって静也さんって優しくて穏やかで理想の男の人でしょう? きっと小夜もそう思うはずだよ。 だけどもう、私の視界はずっと真っ暗闇で、手だけは温かい。静也さんが握ってくれているのかな。 ねえ、小夜。今どこに———— どこからか小夜の声がする。 そしてもうひとつ、知っている声。 そっか……小夜を幸せにしてくれるのは、涼なんだね。 『澪の大事な家族を幸せにするから認めてほしい』 ねえ、静也さんいいよね? 涼ならきっと小夜を守ってくれるから。 温かい右手がぎゅっと強く握られた。 「いーよ」 その代わり、ちゃんと幸せにしてね。あたしの……あたしたちの大事な子なんだから。 小夜、あのね。 ずっと言えなかったけど、あたしね
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