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「そりゃ、わかるだろ」
「へー……」
「なんだよ、やきもち?」
先生の笑い声が聞こえたかと思えば、掛け布団がはぎ取られてしまった。
「顔赤いな」
「ちょ、やめて! 見ないで!」
掛け布団を奪い返そうとする手を掴まれて、布団に押し付けられてしまう。
「なんで顔逸らすんだよ」
「……顔見られたくないから」
「見せて」
「せんせいって何気に意地悪だよね」
私が恥ずかしくて隠れたがっていることをわかっていながら、わざとこういうことをして楽しんでいる。大人なくせに、こういうときは子どもっぽい。
「好きな子のことはいじめたくなるもんなんだよ」
「……小学生じゃないんだから」
「そうだな。小学生じゃないから、いじめるだけで終われないよな」
横目で見やると、なにかを企んでいるような悪い笑み。嫌な予感がして、先生の手から逃れようと腕を動かしてみるけれどびくともしない。
「小夜」
ぐっと顔を近づけられる。何事かと目を見開いていると、甘ったるい笑みを向けられた。
「キス、しよっか」
「な、なに、言って……っ」
どうしていつもそうやってわざわざ確認をしてくるのかと、恥ずかしさのあまり先生を睨みつける。
先生はよくこうしてキスをしていいかと聞いてくるのだ。そんなこと聞かないでほしいと言っているのに、私の反応を楽しむように合意の上でした方がいいだろと機嫌よく確認をとってくる。
「……っ、いやだ」
毎度弄ばれているので、仕返しと言わんばかりに私は拒否をしてみた。先生がどんな反応をしてくるのかと怖かったけれど、何故かにっこりと微笑まれる。
……なんでこの状況で機嫌がいいの? しかも、いきいきしているように見えるのは何故だろう。
「わかった。小夜が嫌ならやめとくか」
そう言って、あっさりと先生が私の腕を掴んでいた手を離して布団から出ていこうとする。
咄嗟に先生の服の裾を引っ張って引き止めてしまう。
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