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「頂きます」
琴美は目を瞑って両手を合わせる。箸を取り少し冷めてしまった砂肝を一粒口へ運んだ。コリコリとゆっくり咀嚼し、少量でも満腹中枢に働き掛けるように意識しながら食べた。
ゆっくり食べても、ものの十五分程で食事は終わってしまう。麦焼酎を強炭酸水で割った炭酸も手伝ってか、充分な満腹感が得られるから夕食には糖質の多い米は極力控えている。
規則正しい生活をしている琴美は早寝早起き。夜九時には消灯し、小一時間スマホで読書したりゲームをしたり。その内睡魔がやって来て寝落ちが毎晩のことだった。
ぴちゃ
ぴちゃ
琴美は寝返りをした際、何処からか水滴のような音が聴こえゆっくり目を開けた。
『うん?……何の音?』
琴美はスマホを探し時間を見た。
『まだ十一時半か……何だろう』
眠い目を擦りながら音を頼りに覚束ない足取りで歩き出す。
琴美の部屋はワンルームマンションで間仕切りのないキッチンと、その横の扉の向こうにトイレと風呂がある。
水滴の音ならばトイレか風呂場か洗面所。水漏れかと不安になりながら音の在りかを探した。
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