屋台戦争

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 四角川(しかくがわ)で夏祭りが開催されて、大通りの左右が100店を超える屋台で埋め尽くされる。その光景は、夏の夜の風物詩となっている。  俺は鉢巻に甚平という格好で焼きそばを作っていた。気温の高さと鉄板の熱さから汗が体を流れていた。友達の佳乃(よしの)が呼び込みと会計をしていた。佳乃は鮮やかな緑色のシャツと群青色のジーンズの格好をしていた。  数日前、商店街の組合員から出店する人にいい話があるという電話を受け取った。三日間行われるお祭りの開催期間の中で最も売上合計額が多い屋台に特別プレゼントを授与するというものだった。屋台が活気に溢れることによって祭りが行われる商店街も繁盛するということで計画されたらしい。  屋台の売上でもらえるプレゼントなんて、たいしたことないだろうなと思っていた。メールアドレスを教えるとその写真を送ると言われたので伝えた。  数分後、送られてきた写真にごくりと唾を呑んだ。佳乃が欲しがっていた大人気アニメのキャラクターのペンダントだった。佳乃から欲しいと前から何度も聞かされていたので、これは運命の巡り合わせだと思った。  俺はこの勝負に勝ちたいと強く願った。佳乃にプレゼントして俺の想いを伝えよう。プレゼントを贈りたい気持ちで仕事をいつもよりずっと頑張ることにした。  俺は売上が少しでも伸びるために焼きそばに入るイカを大ぶりなものにして、豚肉やキャベツやもやしは厳選されたものにした。大きなイカを使っていることをアピールするために、食品サンプルを屋台に備え付けた。  麺は製麺所から直接頂けるように話をつけた。焼きそばの脇役として知られる青海苔、紅生姜にもこだわった。
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