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マモルが思った通りだ。空き地のど真ん中の辺りで、五所川原ダンがひとりでサッカーボールを蹴って遊んでいた。ダンの他に子供たちの姿はない。ダンがいつものように空き地を独り占めしているのだ。
「うわあ、やっぱり来なきゃ良かった。ダンがいるよ! しかも、とんでもなく機嫌が悪そうだぞ」
マモルの泣き言などお構い無しに、アニキ――キョーダノイドZハードは空き地の真ん中までのし歩いていった。
「おい!」
ダンがサッカーボールを踏みつけながら、天も割れんばかりの雄叫び声をあげた。
「ここは俺の縄張りだ。どこのロボットか知らねえが、勝手に入ってくんじゃねえ」
ダンは「これでも食らえ!」と叫び、素早いモーションでサッカーボールを蹴り飛ばした。強烈なシュートが決まるかに思えたが、キョーダノイドZハードは見事なヘディングでそれをはね返した。サッカーボールはダンの足下に転がった。
「ここは近所の子供がみんなで遊ぶ場所だろう。ガキ大将かなにか知らんが、おまえがひとりで占拠するのはいただけないな」
「なにを!」
ダンはいきり立った。
マモルは空き地の隅でただ震えているばかりである。
「アニキ、もういいよ。帰ろうよ」
「いや、マモル。こいつと話をつける」
「ロボットのくせにカッコつけんな」
ダンは「あちょーっ」と叫び、握り拳をキョーダノイドZハードに叩きつけた。
銀色に光り輝く強化金属の外殻に身を包んだキョーダノイドZハードの身体を素手で攻撃するなど、まさに無謀以外のなにものでもないのであった。ガキ大将五所川原ダンは真っ赤に腫れ上がった右手を噛んでわんわん泣きながら、転がるようにして空き地から遁走してしまった。
「すごい! アニキ強いんだね!」
「俺はなんにもしてないんだがな。あいつが勝手に痛がってただけだ」
キョーダノイドZハードはニヤリと笑った。
「だが、強いていえば、俺は一歩も退かなかった。これでわかっただろう。理不尽な目にあっても引き下がるな。相手にビビって退いたら負けなんだ。いつも黙って負けてばかりではつまらんぞ」
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