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夕飯は、この領地の海で取れた海産物をふんだんに使った料理が出された。とても二人分とは思えない量が出されて、僕はだいぶ面食らった。けれど、クロードはそうでも無いのか、ずいぶんと食べていた。騎士様は食事の量が多いようだ。
僕はジェスをそばに呼んで、そっと伝えた。
「ねぇ、僕はダイエットしたいの、こんなに沢山は要らなかった。でも、今日は仕方がないよね? 明日の朝からは、使用人たちが食べるのと変わらない内容にしてくれないかな?」
「え?」
ジェスが驚いた顔をする。まぁ、普通の量にしてって言うぐらいなら受け入れてもらえるだろうけど、使用人たちと同じような、っていうのは受け入れられないのかもしれない。
「僕は痩せたいの。明日から質素な食事を希望するよ。お茶に砂糖は入れないで。おやつもいらない。僕を甘やかさないで」
ハッキリとそういうと、ジェスは驚いた顔から、すぐに真面目な顔になった。
「かしこまりました、坊っちゃま。すぐに手配を致します」
ジェスは食堂を出ていってしまった。恐らく、調理場に向かったのだろう。明日の朝の朝食の仕込みの都合があるからだと思う。まだ夕飯の時間であるから、料理人たちはまだ調理場にいるはずだ。
「偉いな、フィンリィ」
そんな僕のやり取りを見ていたクロードが、食事の手を止めて僕を褒めた。しかも、名前呼びで!
「えっ?……そ、そう、かな…」
見慣れない優しそうな目線を送られて、そんなことを言われると、正直照れる。僕のことを嫌いなはずなのに名前を呼ぶだなんて意外だ。
なんだか急に恥ずかしくなって、僕はこの後ずっと下を向いたまま食事をしたのだった。
翌朝、僕は頑張って早起きをした。
高価な目覚めし時計に起こしてもらったんだけど、ちゃんと前の夜にセットは自分でした。
体内時計を正すためにも、朝起きたら朝日を、全身に浴びるのはいい事だと思う。
窓を開けてテラスに出ると、庭には既にクロードがいた。シャツとズボンと言う軽装だけど、庭を走っているようだった。
早起きをしてジョギングをするなんて、なんて、爽やかなんだ! しかも、僕を誘わない。日中は僕の相手をするから、自分の鍛錬は早朝にやってしまおうと言うことなんだろう。
悔しいと思いつつも、今の僕にジョギングなんてできるわけもない。僕は着替えて下に降りてみた。サロンのテラスから、クロードの姿がよく見えた。僕はメイドに声をかけ、ハーブを入れた水の用意をさせた。
テラスに出ると、クロードが気がついて僕を見た。
僕はメイドに用意させたハーブ水をクロードに勧めた。もちろん、僕も飲んだ。寝起きの水は大切だからね。
「ありがとう、美味しいよ」
クロードは僕になのかメイドになのか、よく分からない方向を向いて礼を言ってくれた。
「あ、レモンの方が良かったかな? ここの領地の特産品なんだ」
僕がそう言うと、クロードが驚いた顔をした。
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